第1話:もの
高天原から下に戻り、
つまり葦原中国に戻ったスサノオ。
根之堅洲國(ねのかたすくに)、
通称『根の国』という、
黄泉の国に近い場所がある。
根、の国というくらいなので、地下の国だ。
黄泉の国にとても近いと言われている、少し生者とは縁が遠くなった世界である。
「(父上は、空気を読んで何処に行くかぐらい何となく察して、分かって下さるだろう)」
そこいらは甘えさせてくれ、と(黙って見逃してくれ、の意)スサノオは思った。
歩いていると、ザザーッと波の音が聞こえた。
「(海が近いんだな)」
自分が治めるはずだった海。
俺は治める器じゃない、さらばだ。
スサノオは潔く言った。
そしていつの間にか、波打ち際で寝てしまった。
海の中で漂う、無重力間の中にいるような、不思議すぎる気持ち。
体が軽くなって、・・・
ハッとして目を覚ますスサノオ。
横には、うわー・・・と思わずつぶやくくらいの美男が。
「誰だ君は!」
かつて父親に言われた台詞を言うスサノオ。
・・・
「私は、あなたの子です」
・・・
・・・?
かつてアマテラス・ツクヨミ・スサノオの三柱でなつさんの前に現れた時の
あの情景を思い出すスサノオ。
「昨日、あなたが海で私を作りました。
私はヘビの神なのですが」
なるほど、と思うスサノオ。
ヘビは金運に繋がります。
経済的なもの、生産的なもの、・・・そういう「もの」に繋がります。
彼の精神:物質数値が、ブレまくっているので先程からそれが気になって
仕方がないスサノオ。
7:3
3:7
7:3
3:7
...
「それはですね、『もの』に繋がるというか、縁が深いので、そうなっているのです。
基本は7:3ですが。
私は『もの』関係のようで」
精神と物質。
精神は「心」、そして物質は「物」
である。
お金とか、丈夫な肉体とか、容姿とか。
そういう、目に見えるものが『物』なのである。
物質だって大切だ。
「(このこは俺のマスター・ピースなんじゃ・・・)」
顔が、、というか、容姿が素晴らしいのは
もの、に関わる神だからなのだろう。
スサノオはしみじみ思った。
「君は、そうだな。うん。
・・・もの、に関わる神だから
かつての、父親の口調で命名するスサノオ。
挨拶を交わし合って別れる父息子だったが、
いい男だな・・・しかし・・・
と感心する(というか驚く)スサノオであった。
基本は、なつさんとはるさんがつくった「7:3」配合だが、
3:7にもなる。
何と言う希少な存在だろう。
そしてもの、にまつわるなんてきっと、葦原中国では唯一の存在なんじゃないか・・・
もう最高傑作(マスター・ピース)は作ったし、
「(これで心置きなく、根の国に行ける)」
やはりまだ吹っ切れないのだろう。
母が恋しいスサノオは、黄泉の国に近いと言われる、根の国に向かった。
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