第5節:伏雷神
第2話:その雷光
タカミムスビは怒り狂っていた。
後の天神様、菅原道真はそんなタカミムスビを必死に止めていた。
「私が悪いのです。私が!」
必死に止めているその顔は、声とは裏腹に落ち着いている。
「許せん!成敗してくれる!人間g」
言い切る前に
道真は「やめて下さい!」と強く止めまくっていた。
タカミムスビは、はるさんにゆずってもらった八柱の雷神たちを我が子、いや
我が子以上に可愛がっていた。
その八柱の中の美しい色白の雷神、伏雷神、
・・・菅原道真はとある藤原氏によって悲しい亡くなり方をした。
立場的にあまりにも上の存在にいるタカミムスビは、
人間どころか、神々にも干渉はしないのが普通であったが・・・
あまりの怒りに、道真を死に追いやった人間を成敗しようとした。
もう誰にも止められない、という勢いであったのだが、
唯一、それを止められる立場であった道真が、必死でタカミムスビを止めていた。
菅原道真。
現在、九州の大宰府で天神様として祀られている学問の神様、兼雷神様である。
齢十一歳にして漢詩を詠み、
現在の東京大学学長に当たる文章博士(もんじょうはかせ)という職についた学者兼政治家である。
(資料:山陰亭)
雷神だった頃、「八」という数字があまりにも力のある数字だっただめ、
八柱のうち一柱が神を降り、人間として生まれ変わらないといけない・・・という出来事が
起きた時
「私だけ違う外見をしている。私だけが違うのだから、私が降りた方がいいだろう」と
あっさりと願い出た。
人間に生まれ変わる、ということになった途端に、伏雷神(道真)以外は全員同じ外見だったはずなのに、
例の一番強い「火雷神」だけが形を変えた。
雷、という集団になると、
一柱だけが何故か外見が変わる・・・という法則でもあるかのような。
伏雷神とは違い、「男」をそのまま体現したような男らしく、金色の目をした色気のある神だ。
髪の毛は短く、基本黒髪なのだがポツポツと金髪が混じっている。
逆立っていたはずの髪ではなくなっている。
カテゴリー的にはなつさんに近い。(色気があるという意味で)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
![新解釈の古事記](../../img/line.gif)
伏雷神は道真として生まれ変わったが・・・
生まれつきやや冷笑を浮かべるような、人を冷ややかに見るようなところがあった。
それは雷神がゆえの仕方ない欠点であり、
彼が兄弟神たちの欠点を一手に引き受けた、とも言える。
雷神にはそういう部分がないと雷神として機能しない、、とも言うべきか。
ちなみにミカヅチに欠けていたのはこの部分で、
有るにはあったのだが、不完全なまま ふにゃっとした形で宿ってしまったのである。
さて。
手のつけられない状態になっていたタカミムスビだったのだが、
道真が必死に止めた。
「私がきっと至らなかったのでしょう。人を小莫迦にしていたのかもしれません」
冷笑を浮かべていたのはせいぜい少年の頃で、大人になる頃には様々な人生経験を経て
そんな不遜な人間ではなくなっていたのだが。
道真は必死に止めまくり、タカミムスビがやっと成敗を思い留まって高天原に戻った後、
微笑を浮かべた。
静かに、かつての神代の頃の記憶が少しずつ戻って行ったのだが・・・
自分の事は自分でしなきゃね、と嗤った。
清涼殿の落雷事件は、後世に伝えられた事件である。
世に言う、「道真の祟り」と言われる宮中落雷事件だ。
未だに、との関係者たちにしか、本当の事は知られていない。
本当はもっと・・・
雷神とはそのような恐ろしいものなのだ。
だからこそ、優しくないとすぐ世の中が破壊されてしまうため
優しくないと、なれないのである。
天上のミカヅチが優しすぎて優柔不断なのは、
そういう事情から来ている。
雷を創るのはそれほどに難しく、
神産みを止めよう、と言ったのに、雷の日になつさんと神を作り、
神避りしてしまったはるさんが、
黄泉の国の穢れで以って作った雷神が、
一柱ではなく八柱に分けられる形にはなったが、奇跡的に創ることが出来た・・・
という訳だ。
第7章:その他「第5節:伏雷神 ー 第2話:その雷光」
第5節:完
BACK「伏雷神」
NEXT「第6節:未恋」