第7節:兄と弟
第4話:大雀命
目の前にいたのは、
巻き毛の黒髪。長い髪、の彫りの深い顔。
縄文顔と言うべきか?
そんな青年であった。
どこの国の人だろう。
魏とか?
タケルがそんなことを考えていると。
青年が、優しげに言った。
この姿を見せたのは初めてだ、この姿を見せたのは
姿を見せたことであの話の真実を信じてもらいたいから。だと。
タケルがあまりにショックを受けていたので、
罪悪感で特別に来てしまった、と語った。
ウジノワキは、遠慮深く頼りない弟だった。
あまりに頼りない様子に、オオサザキは不安になった。
こんなもじもじしている人間がオオキミになったら、この国はどうなるのか―・・・
そのため、オオサザキは父親に願い出た。
自分なら必ず父上の跡を継いで立派に働いてみせると。
弟は、ウジノワキは優しいが弱すぎると―。
父親の、
応神天皇は言った。
おまえは頭が良すぎ武勇が有りすぎ、人を惹き付ける力が有りすぎ、
きっと逆に国を混乱に陥れるようで心配していた、と。
オオサザキは頭を下げ、そっと言った。
「・・・私の気性のことで父上が心配なさっていたのは知っていました。
ご心配掛けて、、本当に申し訳有りません」
―
タケルがさえぎる。
目の前には胡坐を掻いているフクロウ(人間)。
「あの、じゃあ、ひいきとかは嘘なんですか?」
とやっとのことで言うタケル。
顔が別人のようになってしまった。
「・・・そうだ」
フクロウ(人間)は答えた。
・・・しかし、ウジノワキは病気で薨去してしまった。
だからオオサザキがオオキミになった。
フクロウは、千年以上生きている。
その間、様々なものを見て来た。
噂や伝承、歴史がどのように変化して伝えられていったのか、を
その身で知っていた。
しかしその応神天皇とオオサザキの会話を、
つまりそのものを聞いてでもいたのだろうか?
「・・・そうだ」
それ以上は言わないフクロウ。
タケルは、その雰囲気に、吸い込まれそうな黒い雰囲気を感じた。
従わないと怖いと感じさせるような。
「・・・それが、
暗い部屋の中、「そうだ」と同じことを言うフクロウ。
「オオサザキは素晴らしいオオキミだった。
女好きという噂も嘘だ。
むしろ一途な方だ。
重すぎるくらいに」
何故悪く言われる部分があったのかと言えば・・・
1、ウジノワキとオオサザキに共通の好きな人がいた
2、ウジノワキとその人が想い合っていたのに、オオサザキがそれを奪ってしまった
ささいなことだが、
こういう部分が、次第に尾ひれが付き、そしてことあるごとに
何もかも優れているところが鼻についたのか、
悪く悪く言われるようになり
その部分が改変されて伝えられたのだと言う。
フクロウは言った。
「・・・僕は、オオサザキは優しく、朗らかで
弟にとても優しかった。
弟も聡明で、弱くはあったが、決して兄にいじめられるような弱さではない―」
その、兄と弟の物語を伝えたかったと。
第7章:その他「第7節:兄と弟 ー 第4話:大雀命」
(第7節は今後続きます。便宜上ここで完、です)
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