小さな世界 > 第1章「妃羽」
ライチーの行方
その日、妃羽はバタバタと動き回っていた。
妃羽「ここにもない・・・」
しばらく部屋のあちこちをねずみのように探す妃羽。
・・・
創作曲をレポート、メモしたノートなのだ。
妃羽は片手で頭を抱えた。
窓に向かい、ベランダから外を見る。
・・・
先日。
暘谷『だめったらだめ!』
妃羽『何でそこまでっ!』
わたし今「グリーン家殺人事件」読んでるのに!
何度読んでも面白い~
間。
結論:
1、特別な何かがあるから曲作れ
2、多分、威俐様がおかしくなったのって原因それ
3、だからやれ(作曲)
妃羽「(押し切られたのはいいけど、どうするか・・・
確かに少しヘンな感じはしたんだよね)」
森林。
妃羽「(・・・威俐様への想い。どうしても嫌えない、あの麻薬のような・・・
それらを、表現した曲。私の想い。
こんなに威俐様を好きなんだ)」
はぁっ
ため息をついて部屋に寄り掛かる。
ビシャッ
いつの間にか、大雨で何処もかしこも雨で濡れた。
街中の公道、車があとから後から走り、雨の勢いで少し視界が白っぽくなっている。
ビシャシャッ
車中。
鴻日「どうでしょうか」
後部座席には暘谷、威俐、麗海。
鴻日、麗海=魏家第2秘書
暘谷「(ライチーの質を落とすだと?)」
手元の資料を見ながら思う暘谷。
◆AAAライチーからBBCライチー変更の提案
鴻日『ライチーの高品質化を求めます』
えーと
「これ、低品質、って案があるけど?」
見間違い?
ボス!
麗海「良かったら女性から直接聞いてみてはいかがでしょうか?」
威俐「え?」
鴻日(ボスって呼ばれてる)「ええ。
それも考えています」
運転席は第2秘書の鴻日、後部座席は3人。
ひたすら書類を読む暘谷。
目をつぶる威俐。
麗海(第2秘書)・・・。
ボストンビル、『チョッコレー』。
アルフレッド「アンケート?」
鴻日「ええ、今度社の商品に、と」
はぁーっ
アルフレッドは宣伝会社の宣伝部長のような立場の人間である。
鴻日「僕は高品質化を望んでいるんだけど」
アルフレッド「ライチーかぁ。僕良く知らないからなぁ」
女性「ほにーさん!あの!」
後ろからとある女性が遠くから鴻日(ほんいー)を呼んだ。
鴻日「どうした」
女性「えっと今上で問題が起こってまして。
至急こちらに」
?
会議室・G
N頭取「― という訳でだね、ほらうちもそんなに値を上げる訳にはいかないから
通常が良いと思ってね」
後ろには何人かの魏の取り持つ企業の秘書たちが控えている。
N頭取「その通常品質のライチー、に「とても良い取り引き先」がいる訳だ」
鴻日「――・・・」
N頭取「えーそれで、「その取り引き先」から仕入れようと思うんだが諸君はどう思うかな」
男性「(きったねー、俺らが何も言えないの知ってるくせに)」
男性「(相変わらずだな)」
暘谷「(これはどういうことだ?
(書類を見ながら)「低品質化の提案」とか「高品質化希望」とか
言いたい放題だな・・・)」
僕は
鴻日「女性、に聞くのが一番だと思います」
全員「(ゆ、勇気あるぅ・・・)」
凍りつく室内。
・・・
N頭取「まぁ、ほら、そうだね 他の君たちなんかないか」
全員は顔を見合わせる。
・・・
鴻日「(これで俺を呼んだのか
反論くらい言えないのか)」
男性「頭取!」
秘書のひとりが声を上げた。
休憩時。
広いフロアでだら~んとふわふわした空間で泳ぐように歩く人間たち。
暘谷「(・・・どこかの取り引き先と手を組んだのか・・・)」
先程の頭取の言葉を思い出す。
暘谷「(何かを決めた上でどうこうしたいのに
話し合う必要はあるのか?)」
暘谷さん。
暘谷「え?」
暘谷は顔を上げた。
目の前には鴻日。
「お疲れですか。コーヒー」
「うん」
そのコーヒーを受け取った。
ずず、とコーヒーを飲む暘谷。
暘谷「(ま、いいか
何とかなる―)」
3人とも、優雅にコーヒーを飲む姿は、休憩時の更なる癒しとなった・・・。
ふわん・・・