小さな世界 > 第1章「妃羽」
受難・・・
妃羽「え?」
ユウは妃羽のベッドでごろごろ転がりながら言った。
ユウ「普通はぁ、出来ても100kmが限界なんだ。
おまえさんは相当な磁力の持ち主のようだな」
本当の住処は「中国上海」。
今回はアメリカのボストンに来ている。
中国にいるはずのユウがテレポート(瞬間移動)出来たのは
類稀(たぐいまれ)な妃羽の磁力ゆえ、と言うことだった。
・・・
妃羽「磁力・・・」
少し青くなる妃羽。
ユウ「何だよ。嬉しくないのか?」
妃羽「何か得体の知れないやつなのかなー・・・って」
ユウ「考えすぎだ。
さぁ、風呂入る、風呂!」
ユウは急かした。
暘谷「(まじで?)」
煌びやかな赤と金の部屋。
威俐「言葉の通りだ」
少しの沈黙。
『今月のレセプション(招待会)には全部出なくていい』
理由を聞いてもハッキリとした答えを出さない威俐。
とうとう諦め、「失礼します」と部屋から去る暘谷。
暘谷「(早速嫌がらせ攻撃か・・・)」
戸惑う彼。
そういう場にこそ秘書が要るのに。
暘谷「(・・・そもそも、妃羽さんと威俐様のためにこうしたのに)」
「(俺がやった意味は何だったんだ?)」
<休憩時間>
麗海「威俐様には、 威俐様のお考えが」
暘谷「分かっちゃいるんですが・・・ハハ」
カサッ
麗海はある小さな冊子を出した。
パラ、、
麗海「―『白 暘谷、北京大学卒業、は、
判断力、行動力、指導力、が極めて優れていると判断。
魏の秘書としてここに任命する』」
麗海が言った。
「こういうの、威俐様がわざわざ書くなんて、異例のことです」
何か事情があるのではないでしょうか」
秘書は必ず持っていなければならない、大切な手帳である。
麗海は疑問であった。
「(こんなに暘谷さんのこと大切?にしているのに)」
暘谷「あー、ちょっと煙草吸って来ていいですかね
・・・まぁそんな昔のこと、、」
あ、はい。
麗海は言った。
がやがやとしている休憩室。
目の前のケーキが手付かずだったのでそっとケーキにフォークを入れる麗海。
暘谷「(どっと疲れた・・・)」
『白 暘谷は、判断力、行動力、指導力、が極めて優れている』
「(・・・折衝力、だけはないかもな)」
※相手を誘導し、思い通りに動かす力
威俐私室。
ウイスキーを呑もうとして、ガタッとテーブルに戻す彼。
威俐「(こんなこと・・・)」
彼は私情で動いたりなどしない。決して。
しかし
妃羽がいけない。妃羽が離れるから。
と、妃羽に心の中で当たった。
・・・
ウイスキーを少しのみ、氷をカラン、と鳴らした。
妃羽「こーれで、いい感じかな?」
(※暘谷邸)
妃羽は飲料水のデザインを画用紙に様々な形で描いていた。
シャッシャッ シャーッ
ユウは絵を指した。
「これはなんなんだ?」
妃羽「ライチーだよ」
ユウ「これが(汗)」
内線から声が聞こえた。
『妃羽さん、鴻日様がいらしております。
お通しして宜しいでしょうか』
ユウ「・・・」
鴻日「本来ならそちらにお邪魔する前にアポを取るべきなのですが」
邸内が上品なクラッシック音楽で包まれる。
ふたりはリビングのソファーに向かい合わせで座っていた。
妃羽は少し赤くなりながら答えた。
「い、いえ」
暘谷さんがあなたの夫になって
「あなたは何か不都合は」
え?
妃羽が答える。
鴻日「暘谷さんが、『最愛の妻』をなくした威俐様の標的になっていないかと」
妃羽は聞いている。
「―・・・失礼。不躾な言い方で申し訳ないですが」
ドアの外で、
「チーズケーキでいいかしら。でも鴻日様は何がお好きなのだろう」
とトマトが言って、
「どっちでもいいじゃーん」
とレタスが言っていた。
鴻日「暘谷さんはハッキリ言って有能な方だ。
我々とは比べ物にならないくらい
―それを、憂いてましてね」
クラッシック音楽が途切れ、ジョージ・ウィンストンの曲が流れて来た。
暘谷「ぶえっくしょっ!」
周りの人間が驚いた。