小さな世界 > 第1章「妃羽」
曲の終わりに
まるで鋭い錐(きり)のように
あなたは私の心にやってきた
魔法にかかり、そして気が付いたら
遠い世界に舞い降りていた。
いつまでももう、同じ世界で楽しくいられない
それならそれで私は楽しむ
あなたの世界は私のもの
きっと楽しいから
あなたのいるこの世界で
いつまでも いつまでも
妃羽「さわやかでいいですね」
愛衣「ですよね?こんな感じをイメージしてて・・・」
?
愛衣は妃羽の赤い顔に気付いた。
とても楽しそうな、いきいきとしているような。
ふぇ
妃羽さんってどうして、威俐様とお離れになったのですか?
え
妃羽「えー?」
妃羽が慌てて楽譜から目を離して大きな声を出した。
あ、や、
「突然なんですけど
そんなに『好きー』って気持ちいっぱいなのに
どうしてかなって・・・」
妃羽は沈んだ。
愛衣は慌てて、「あ、済みません。失礼なことを・・・」と謝った。
愛衣「じぇ、ジェラートアイス、持ってきます?(妃羽の大好物。持ってきていた)
って私、何言ってんの?!」
カッチィーン・・・
ポトッ
カチンッ
筆記用具たちが落ちた。
妃羽「なんでだろ・・・」
『入れ』
白い受話器のようなものをカチャッと置く鴻日。
声を確認した後に。
カチャッ
「失礼します」
カラン・・・
威俐はウイスキー(ブランデーかも)を鳴らしてテーブルに置いた。
鴻日「あなたは、気付いてらした」
何故か冷静な声で言っている鴻日。
ユウ「(訳の分からない威俐サマの行動、妃羽の立ち位置。
よ~やるねぇ こいつは分かってた訳だ)」
すぐ近くの窓で、ふたりを見守るユウ(猫。偽物のような登場)
10分程経ち。
鴻日は退室した。
?
その際、ユウは鴻日と目が合い、フッと冷笑をされたのを確認した。
ユウ家(仮住まい)。
ユウ「(うっさん臭ぇ奴だなぁ
あーめんどさ・・・)」
妃羽『ユウってば過保護?よー』
ユウはため息をつき、どうやって妃羽と再会するかと思っていた。
♪♪
ポロロッ
♪♪ ポッポーン
愛衣「ふぅ」
妃羽「やっと出来た」
「いや、こんな感じかな?」
愛衣「やっ、もう大丈夫ですって
頑張りすぎですっ!」
ユウは遠くからその様を見ていた。
愛衣「名残惜しいのは私も一緒です!
(涙声)まだあいばじょ~」
妃羽「は、はい(汗)」
見送り時。
妃羽は大きく手を振った。
「また来て下さい、是非ー」
後ろにはトマトとレタスがいる。
愛衣は何度も何度も振り返って言った。
愛衣「また会いに来ます!また来ますでぇ~~(涙)」
妃羽「・・・何であんなに」
トマト「妃羽さんの恋人だと思っているのでしょう」
レタス「好かれるのっていいな~」
カツッとサンダルを履いて歩く妃羽。
「(やっと今日一日終わった・・・)」
愛衣がいなくなり、気付けば辺りはすっかり暗くなっている。
暗い私室の電気を点ける。
ユウ「や~あ 妃羽?」
ユウ「お約束だな こういうの」
妃羽「やだっ、だって」
妃羽の鉄拳をくらい、傷を作ったユウに手当をしている妃羽。
その後。
「だから、あいつには注意しろ」
クッションの上に乗りながら言うユウ。
えーと
鴻日さんて
「(あの、、ブラウンのスーツ着てる人?)」
ユウ「何らかの秘密を握ってるって顔してる
付け込まれないように気を付けるんだな」
妃羽「で、でも突然・・・」
妃羽が言った。
ユウ「心配だから見守ってる。おまえさん危っかしいからな)」
目まぐるしく変わる展開。
現実が分からないまま、時過ぎ行く・・・。