小さな世界 > 第1章「妃羽」
謎の
自分の部屋に着き。
椅子に腰かけた上で改めて思った。
「(何が何だか訳が分からない―
これは夢の世界?
・・・)」
再度、自身の統合失調症を疑う彼女。
「(これから地獄だよね。
更に想いが深くなって、結婚とか出来ない・・・。
辛すぎるんだけど。幸せの後には・・・)」
想像も出来ない地獄を思い、
咄嗟に忘れるためにはどうすればいいんだろう?と
超高速回転で考え出す・・・妃羽。
魏 威俐。
私の憧れの人だった。
女の部分を感じた、とか言っていた。
良く分からないけど自信を持たないといけない。
チャリ...
「(やっぱりこれ危ないよね。鍵・・・どうしよう・・・)」
妃羽は「やっぱり返して下さい」、と遣わされた人間がやってきて
鍵を取り返しに来られるだろうと思った。
とりあえず、と小さな木箱に入れた。
彼女は司書だ。
次の日は仕事に行かないといけないため、すぐに気持ちを切り替えないといけない。
「(これは・・・全部夢・・・)」
妃羽は眠りについた。
久し振りの仕事の日の夜。
うとうとと寝ながら夢の中に入ってゆく妃羽。
え
寝ぼけまなこで宙を見ると
ぼや~っとした人影が映った。
「ッドロッ・・・」
言い掛けて、息を飲む妃羽。
「あ、合鍵・・・合鍵・・・?」
パクパクと口を開けて小さく言う彼女。
どうやって入って来た。
合鍵作ったのか、という意味だ。
!
そこにいた人物の名前を叫ぶ妃羽。
しーん・・・とした静寂。
目の前の人物も、何故か「なんでこんなところにいるの・・・自分」というような信じられない顔をしている。
「あの・・・」
やっと声を出す妃羽。
「臓器売買とか・・・」
思い付いたことを言う。
パーティの召し使いの仕事の採用時に、それぞれの召し使いの健康診断を秘密裏に行っていて、
「それでっ!私が『優等』って出て!」
妃羽が叫んだ時に暗闇の人物がビクッとした。
大声にビックリしたらしい。
「それでっ!売り渡そうってんでしょ。
だから私に優しくしたりとかっ!
気があるんだ、よし、こいつはいいカモだ、みたいなっ!」
枕をバッと抱え、ブルブル震えながら応戦体制をする妃羽。
月明りが、その人物を照らす。
「・・・意味が分からない。私は何故こんなことを」
―5分後・・・
「威俐様」
妃羽は、うなだれて座っている威俐の名を呼んだ。
合鍵を持っている意味も分からなければ、ここにわざわざ来る―
調べて来る理由も分からない。
一体何故来たんだろう。
それをしきりに疑問に思い、悩む威俐。
本気で悩んでいる。
わざとらしいお芝居にも見える。
・・・
妃羽「じゅうきょしんっ・・に」
住居侵入罪!と言いたかった妃羽。
これが一般人だったら有無を言わさずボコボコにしていただろう。
怒りのあまり警察に、問答無用で通報だ。
・・・威俐という、自分と違う世界の人間に対しては
何をしていいのか分からず、行動に自動的にセーブが掛かってしまっていた。
第三者だったら「これこれこうするべきだ!」とか
後になって冷静にこの状況を振り返ることの出来る時だったら
「こうするべきだ!」「常識で考えて普通はこうする!」とか
いくらでも言えそうなのだが。
いざ、非日常な場面があると、本当に固まってしまい、何も出来なくなるのだ。
ガラガラッ
ガシャシャッ
グワーッ
音に、驚く妃羽。
近所のカップルの痴話喧嘩?のようであった。
ハッと暗闇でだいぶ目が慣れた。
妃羽は夢なのかな?と思いながらも、とうとう意を決して叫んだ。
文法がまるでなっていないような感じで次のような主旨のことを言う妃羽。
臨時のメイド採用において、
健康診断で妃羽が『特別優良』と出た。
そしてパーティで妃羽がどうやら自分に気があることを知り、
突然の思い付き?でうまく取り込んで少しずつ警戒心を解いて・・・
その手の人間に引き渡す気だったのだろう、と。
威俐「違う!」
威俐が声を荒げた。
顔を覆う彼。
威俐「そうじゃない。良く分からない・・・」
朝、、夜明け前に威俐は帰って行った。