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小さな世界 | 現代ファンタジー小説

小さな世界 > 第1章「妃羽」

つがい・・・

婚儀の日。
車の中では数名の怖そうな男性たちと、
運転手、新郎と新婦がいた。

妃羽は思う。
「(私も両親がいないけど、(他界)
威俐様も、ご両親が他界なさってるんだ・・・)」

威俐の両親に色々厭味を言われたりしないで済む・・・

不謹慎なことを考える妃羽。

外は護衛のような車たちと、マスメディア関連のものと思われる車が走っていた。


ここにくるまでたくさんあった。

後で、犯罪の片棒を担がされるのかとか
本命との逢引きのための道具にされるのか、とか
これから何人も妻を娶るとして、私が第一号なのですか、とか

私が健康だから臓器を売るとか、とか

変な闇接待に利用するのかとか
(平凡な容姿だから疑われない、と見越して)


思い付くまま言い、そして
「あなたのことは好きだけど、結婚はしたくない。意図が分からないから」
と何度も伝えた妃羽。


「(何度も伝えたのに・・・)」
あなたとは一緒になりたくない。と言っているのに、
無理矢理婚儀に結び付けるのはおかしいのではないだろうか。


ただ
「(好きなことは好きなのよね・・・きゃー)」
好きな気持ちはずどーんとある妃羽。

司書の仕事をしていても、洗濯物をしていても、朝起きて窓から射す光にぼーっとしても

・・・

現在

「(好きという気持ちを見透かされて、それでこうやって強引に・・・
私もいけないんだけど)」

妃羽は優柔不断だった。
断っているのに、何となく雰囲気やオーラが、「それでも強引に来て下さい」
と語っていた。
それはもう強く。

口調は凛として正論も言っているが、
醸し出すものは真逆であったのだ。

そういう妃羽は隙だらけだった。


しばらくして・・・目的地である煌びやかなホテルに着いた。


新聞社の人間や様々な人間たちが、いつの間にか周りを取り囲んでいた。
妃羽は彼らが、人間の振りをした柔らかい人形のように見えた。


あまりに場違いな場に面食らい、とうとう気分が悪くなる彼女。

ごつい体をした男性が声を掛けた。
「大丈夫ですか?」

「めまいがします。えっと休憩室とかありますか?」







『何者かの意志なんだと思うぜ』


「?」
簡単に休憩室で寝入ってしまい、(緊張のせいだろう)
ハッと起きる妃羽。



・・・


司会「侯 妃羽さんは一般の方のため、内輪で開かれることになりました。
さぁ皆さんご挨拶を」


パチパチパチパチ

がやがやがや


会場は、絵画の中にある風景のように思えた。
人々は無名の妃羽を疑問に思い、じろじろ見て噂し合った。

「(名家の家、ってことにせずに『一般の家』って言って下さいと言ったケド・・・
失敗だったかも・・・)」

ずっと真っ赤な顔をしながら、空(くう)を見る妃羽。

「(友映と礼法を呼ばなくて正解だった。←呼んでないのか!
こんなところにいたらさすがにふたりだって)」

しとしと雨が降る外を見ながら、
親戚がほぼ全てが早世しているのを幸運に思った。
面倒臭いことが増えると思ったからである。




・・・

初日の夜―

特に何もせずに眠る妃羽と威俐。

妃羽は緊張もあって、ずっと寝ていた。


深夜、
威俐は隣の部屋に行って窓を開けた。


・・・



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