小さな世界 > 第1章「妃羽」
花びら舞う
時折り、メイドの服を着ている感覚に陥る妃羽。
しかし普通の服を着ている。
妃羽は、自分が「メイド」という身分じゃない、のを不思議に思っていた。
・・・
魏家に嫁いで1週間。
執事、召し使い、料理長、庭師に至るまで様々な人間たち。
彼らは妃羽に対して、ごく普通に接した。
彼らも彼らで人形のように見える妃羽。
しかしそれが心地良かった。
彼らにそれとなく「裏」を聞く妃羽だが、
「さぁ。存じ上げません」
しか言わない。
職場の職員たちも、かなり凄い?事になっているにも関わらず、
全然気にしていないようで、聞こうにも「さぁ・・・考えすぎじゃない?不安なの?」
と普通な応対。
状況がおかしい、何かだまされているようだ。
と妃羽が言うと
「へぇ・・・なんで?」
と、普通の応対。
休日は友映と礼法と過ごし、ひたすら話を聞いてもらう妃羽。
友映「まーた悩んでンの?」
さっぱりした感じで言う友映。
そこは白いテーブルと椅子がたくさん並び、周りが桃色の花を付けた木々が
取り囲んでいる場所であった。
友映と礼法は持ち歩きの碁ボードで、碁をやっていた。
・・・
『女の部分を強く感じた』
ふたりの碁の勝負を見ながら、威俐の言葉を反芻する妃羽。
サラサラサラ.........
花びらが舞う。
わーい
友映「勝ったぁー あー疲れた」
両手を挙げ、満面の笑みで友映が勝利を宣言。
ぐおぉぉ。
礼法は負けてうめいていた。
サラサラ、と花びらがなおも散っている。
ベンチで礼法が両脚をバタバタさせて、友映が両腕を組んでいた。
「あんたさー、自己評価低いんでない?」
妃羽はあごを引いてしょんぼりしながら言う。
「もう何か・・・あれからずっと自信がないよ。
どうして、ってそればっかり」
お菓子を片頬で食べながら友映が言った。
「でもアレはしてんでしょ 夫婦なんだから」
子供たちの歓声が響く。
追い掛けっこをしているらしい。
ボール使用のゲームじゃないのを安心する妃羽。
花びらの舞うのが少し止む。
「妃羽?」友映が黙ってしまった妃羽に問う。
「あ、あれから私たち何も・・・」
・・・
完全に止んだ花びら。
礼法も静止していた。
1、威俐は手を出さない
2、妃羽はそれが丁度良い
お茶を飲む妃羽。
声を荒げて「なにソレー!」と友映が言う。
「それでも夫婦なの?愛し合ってるの?」
礼法「やめてよっ!フェイちゃんにはフェイちゃんの事情があるんだよっ」
風が吹き、砂ぼこりが3人に掛かった。
ぱさぱさと砂をはたき落とす3人。
「・・・何らかの事情で私を妻・・・?にしたんだと思う。
こんな状態だし」
目を点にしていた礼法と友映だが
「何で?理由でもあるの?
威俐様のことだけど」
と友映。
スカートの上にたまった花びらをぱさぱささせて
礼法も言う。
「何か理由があるんじゃないかな。
ウィリー様はフェイちゃんを大切にしてるんじゃない?
フェイちゃんが怖がってるから」
ふわっ.........
砂ぼこりだったのが、再度また花びら舞う、に変わった。
帰り際、友映は170㎝の長身で格好良く手を振りながら、
『あんたもっと自信持ちなー。笑顔をたくさんねー
何かあったらあたしたちが慰めてあげるからー いろいろとー』
と言い、
礼法は
『フェイちゃーん、笑顔をいっぱいだよー♪』
と言った。
まるで円があって、中心に向かってぐるぐる回る感じで、
花びらが激しく舞っていた。
『女の部分を強く感じた』
『結婚の事実』
『何も手を出してこない』
フゥ、とため息をつく妃羽。
訳が分からない・・・
う~む、とひらめく妃羽。
「(素敵に見えたけど、いざ結婚したら魅力的に見えずに・・・
手を出さない。
イコール、今さら離縁出来ない)」
渋い顔をしながら、少し雨が降り出す中を歩く妃羽。