小さな世界 > 第2章「パン・オンライン」
精鋭
白いバスローブ姿でシャワーから上がってくる鴻日。
ポーンポンポンッ
ユウはカウンターの椅子から降りた。
「おっ、カクテル作ったぜー」
?
鴻日がカウンターを見ると、いくつかカクテルが並んでいた。
スタスタと歩き、ひとつひとつをくんくん嗅ぐ鴻日。
「ふーん」
ユウ「べ、別に毒なんか入って、、
猫がカクテル作るのおかしーか!」
カチンッ
グラスを置く鴻日。
鴻日「おかしくない
頂こう」
そうしてグレイの寝巻きに着替えていった。
ユウはそのつかみどころのない鴻日の姿に少し戸惑った。
再度カウンターに並んでいるカクテルを見た。
鴻日「猫くん、お待たせ」
おっ
向き直る。
ついっ
「マンハッタン、お勧めだぜ」
グラスを押し出すユウ。
ユウは、とある竜のぬいぐるみに
この世界のことを教えてもらった、と語った。
「頭がおかしくなった、とは思ってねぇ」
鴻日は、
「似たようなものだな」
と言った。
ぬいぐるみでは、ないらしい。
・・・
もっと大きな存在っぽいな
と思うユウ。
鴻日「この世界が、『事実』になるらしいよ」
ユウ「・・・
その『なにか』から聞いたん、だな」
鴻日「そうだね」
♪
♪
♪♪ ♪
♪♪♪
しばらくJAZZ音楽を聴きながら沈黙していたふたり(ひとりと一匹)だったが・・・。
少し、マンハッタンに口をつけて鴻日が言った。
「数ある存在の中で選ばれたのは光栄だ」
「―・・・だが、選ばれたからには最高の俺を出したい」
生意気なこと言えねーけど
「選ばれた時点で、最高も何もないと思うぜ」
椅子の上でちょこんっと座って言うユウ。
黙っている鴻日。
トンッ
トーンッ
スタスタ
近くのソファーに座るユウ。
・・・
「(偶然かもしれないけど、威俐サマといい、暘谷さんといい、
鴻日さんといい。
負けず嫌いなヤツばっかだなー)」
・・・
「(作り話の世界だろうと何だろうと、何となく気に入った妃羽が
ここで幸せになって欲しくて威俐サマとくっつけようとしたけど)」
そうそう上手く行くもんじゃねーんだなと思うユウ。
ん?
ピシッ
かつての記憶を思い出す。
ボス猫『おまえボスになりゃいいじゃねーか!何で1番上を目指さねーんだよ!
迷惑なんだよ(怒)』
ユウ『俺の勝手だろ!1番とか面倒臭えぇんだよ』
ボス猫『負けず嫌いのくせに。あーたらこーたら』
首をピンッと伸ばすユウ。
チャ~ッとあらかじめ鴻日が用意してくれた猫トイレに用を足し、
しつけのいい猫のように前脚でサッサッと砂を掛ける。
ユウ「おい、鴻日さん」
ユウは声を掛けた。
「ん」
振り向かずに鴻日は言う。
ユウ「磁力、だけじゃないかもしれないぜ。
1番になりたいヤツ同士のサバイバルゲーム?かもな」
・・・
サッと静かにユウの方に向く鴻日。
「・・・それは」
ユウは姿勢を崩さない。
1番の威俐サマ、どう考えてもNo.2ではない暘谷さん、どう考えても社長(会長)っぽいおまえさん、
ボスにならない、、っていうと変だが、ボス拒否の俺。
トップ秘書の麗海さんが実質No.3の秘書。
・・・
「世界を現実にするための、力の強い、エネルギーのある人間たちが選ばれた―・・・
まぁそんなとこだろうな」
現実は冷たい。想像ではない。
でも、想像だと言い切りたくなる。
それは、どこの世界も同じ。
現実はすでにあるのだ。
どこの世界にも
どの世界にも?
・・・
すぐに、次の世界の空が広がることになる。
息つく暇もなく。