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小さな世界 | 現代ファンタジー小説

小さな世界 > 第2章「パン・オンライン」

バグ

理々「今日は『夏』なんだぁー」

ジージージー

あちこちで向日葵が咲いている。

道路の至るところでスプリンクラーが水をまいている。

パン・オンラインは日毎に季節が変わる。
体を著しく壊してしまいそうだが、この世界に降り立ったと同時に
この気温に適応する予防接種が打たれる。

(たまに拒否反応を起こす人間もいて、そういう人間は強制的に元の世界に引き戻される)


ハーッ
裕也「蝉の鳴き声がすごいね
現実世界ではあんまり聞かなくなったのに」
汗をぬぐう彼。


春夏秋冬、とひと通り楽しもうということになり。
こうしてくつろぐふたり。


裕也「ハハハ。いいのかなこんなんで。
今頃地上?ではみんなが働いているのに」

あら
「これも運命ですよ。
それに、時間経ってないんですよ」

裕也「物理、どのくらい待ってるかなみんな」

「どうだろう。ふふ」

裕也「どうせ物理は人気ないですよー」

理々「私は先生の物理好きですよ?」

ジーワ ジーワ
(蝉)


パタッパタッ

理々が例の妃羽の物語の本を持っていた。

・・・
裕也「好きだねそれ」



再度、何処かのベンチ。

そよそよ風が吹き、大樹の下にいるのでとても涼しい。

「ここ!」

昨日理々が指摘した、妃羽の物語の件の場所である。

理々「おかしいです。ぷ、プロポーズってもっと。
こう。ち、違う気して」

裕也はそのシーンを知っていて、理々が指でさしたその部分を再度見た。

少し笑顔で言う裕也。
「それってさ、つまり、」

ハッ
ビクッとして理々が「だめっ!」とさえぎった。

あぁぁ
「せ、先生は、、オチ知ってるんでしょ。
ダメ。ダメ!」

・・・

「(聞いてきたのに・・・)」

・・・が

くるっと裕也に向き直る理々。

「お、教えて欲しいかな。ネタバレしない程度で・・・」


うーむ、と考えてから裕也は言った。

裕也「ふたつ、考えられるな」
ひとつは、仕組まれたもの。だから自然でないプロポーズが遂行された
もうひとつは、バグ。

へ、へっ?
理々が少し声を上げた。

プログラミングされたはずの動きが、歪んだ。

「バグっていうのはただ違う動きをするだけじゃないんだ。
多分・・・
動きが不自然になるんだよ」

理々「・・・」

動きが本来と違うように作用する・・・

バサバサバサッ
鳥が飛び立つ。

あ、
理々「違う、動きになるの。不自然な動きに?」

裕也「そうだ バグはおかしい動きがあった場合に疑うべき・・・
って言い過ぎ?」
慌てる彼。

ご、ごめ、、、
謝る裕也と、


考え込む理々。


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裕也「何でそこまで、その物語に興味を持つの?」


理々「先生は興味持たないんですか?」

夕暮れ時。
ふたりは、まだ多少水がまかれているスクリンプラーの道路を歩いている。


「何か思い出しそうで。違うかもしれないけど・・・」

ハハッ
「インスピレーションてやつかな」と裕也。


ニコニコしながら、宿屋に着いた時に裕也が言った。
「あのね、サプライズがあるんだ
楽しみに、しててね」



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