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小さな世界 | 現代ファンタジー小説

小さな世界 > 第3章「ミルフィーユ」

少しずつ

威俐「へ?」

あ、愛がないみたいなのです。
おかしい。こんなにあなたへの愛はあるのに。

威俐「・・・・・・」

妃羽「正樹さんから、いえ、花宇さんにも
『愛』がないと」

カチャッと上品にティーカップを小皿に置く威俐。
何も表情は無い。


妃羽「聞いて下さい。世界がおかしいのです。
私の音楽がどうのとか。
・・・変なことを言ってるのは分かっています」

・・・
威俐「それで?どうしたいの」

分かりません。
ただ、私の「愛」をどうにかして
「音楽」をどうにかして

・・・


ふむ

威俐「君も悲劇のお姫様だな
悪い意味ではなくて」

サッと立って夜景の綺麗な窓の所に行く威俐。

妃羽「あ・・・」


君が特殊な存在だということは分かっていたよ

「関わるとやっかいな存在だと言うことも」


威俐「だが」

・・・

ふむ
威俐は腕を組んだ。


妃羽は説明した。


・愛、がスカスカ
・妃羽の極度の精神主義
・威俐の極度の物質主義

・そして、音楽で妃羽が周りに影響をもたらすらしい
=オカルトです!

「(全部言った・・・)」
必死過ぎだったかも、と焦る妃羽。

・・・

「だからなんだ。おまえの望みは?」
威俐は厳しく言う。


ボィィーン..
ゴゴゴーン.....


「ブイーン」と鳴らない車の音が気になるふたり。

かつてない緊張感が二者に漂っているようだ。


「分かったよ」
威俐が背を向ける。

「謎、解明してこうか。ふたりで」

煙草吸う人なんていないのに、思わず灰皿を見る妃羽。
気が緩んだのだろう。

窓の外には摩天楼の夜景が広がっている。

・・・

綺麗。
色んな謎が血脈となって流れている。物質の世界でも。

と思う妃羽。


コクッ
「(の、喉渇いちゃった)」
今更お茶を飲む彼女。


『君が特殊な存在だということは分かっていたよ』
先程の威俐の言葉がよぎった。

・・・
妃羽「(どのくらい知っているんだろう。鴻日さんはたくさん知っていたみたいだけど)」


「(私の知らないところでネコ集会があって、そこで情報交換してる、とか・・・)」
ヘンなことを考える妃羽。
(ネコ?)


威俐は少し残念に感じた。
いちいち部屋に来たのは、、

こんな話をするためだったのか!と


威俐「他には?」
横を向き、窓に肘をついて言う彼。

・・・ハッ
妃羽は赤くなった。
と同時に青くなった。

顔を上げ、ハッキリと聞こえるように言う彼女。
「まだ、無理です」

・・・
「(これが力によるものなのか、そうではないものか、分からない・・・
どうせ愛情は無いし。
無くても嬉しいけど・・・)」


「私を愛してるんだろう?」
意味が分からない、という顔で声を荒げる威俐。

バタッ、とソファーの後ろにのけぞる妃羽。
目が白くなっている。

「(わがまま!何てわがままなの!信じられない・・・)」
今は『離れている期間』なのである。


威俐「じゃあいいよ。勝手にしたら」
この言い方が、今までしていた暗い話を一気に中和するものだと、妃羽は知っていた。

「(やっぱり、この人好きだ・・・)」
そう思う妃羽。



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