小さな世界 > 第3章「ミルフィーユ」
糸として
ガラッ
清子は足元の砂利にカクッとなりそうだった。
清子「シュンユーさん!待って」
場所は雪舟の「四季山水図」のような、中国の山奥のようなところ。
中国かは分からない。
切り立った崖の道のすぐ左横には、深い谷が広がっている。
清子「(ひっ)」
ひたすら目の前のシュンユーを追い掛ける清子。
あのっ
「早すぎます!」
空は妙な山吹色をしている。
とても不思議な感じだ。
シュンユーは振り向いて言った。
「あなたが、遅い」
竹流はあたふたしていた。
パタパタ清子の元へ飛んで行き、
竹流「御免ね、シュンちゃんはこれが普通で。悪気は無いんだよ。
これが普通だから」
と言った。
はっはい
大丈夫です
「ご丁寧にどうも!」
清子はぺこっとお辞儀をした。
竹流は色々とシュンユーに言っていた。
シュンユー「そう?でもこれから大変なことが起こるから・・・
ビシッとしなきゃ、と思って・・・」
どのくらい時間が経っただろうか。
何とも形容しがたい場所に辿り着いた。
明るい色とも、暗い色とも、軽い雰囲気とも重い雰囲気とも分からない。
異次元のような気持ち悪さだ。
不快感はそうはないが、、
本能が「ここにいてはいけない」と言っている。
ぼんやりする清子。
「(どうやってここに来る事になったんだっけ
気付いたらシュンユーさんとここ歩いていて・・・)」
ポンッ
空中からシュンユーが何かを出した。
綺麗なビンである。
清子に差し出した。
「ミラティー。体力精神力全回復するの」
F層のパン・オンラインのものよ
とシュンユー。
ごくごくとミラティーを飲むのを見ながら、
竹流が
「ちょっとひとくち飲ませてくれないかなぁ」
と言った。
シュンユー「こ、これから大変なことになる人のをっ!」
シュンユーは止めたが
「どうぞ」
とニッコリと清子が竹流に渡した。
竹流「いや~何か興味あってさ」
コクッコクコクッ
こりゃうまい!
「うまいよこりゃ!」
いや~うまい。
すぐに清子にミラティーを返す竹流。
立ちなさい。
シュンユーが深い谷の所まで行って、
清子に言った。
清子は慌てた。
「は、はいっ」
何があるんだろう?と思いながらシュンユーの傍に行く。
これからね、A層に行くの。
「糸、なのよ
しっかりね」
鋭い目。
夏彦『理不尽だ・・・。怖くないのか清子・・・』
『糸』
改めて、(遅い)自分の妙な運命を噛みしめる清子。
GOOD LUCK
ドンッ!!
冷酷な表情で清子を千尋の谷へ突き飛ばすシュンユー。
「?!」
がばっと起き上がる。
そよそよ そよそよ
目が回る清子。
一面の花畑である。
立つのも忘れて清子は考えた。
「(ここは何処?前まで・・・なに、を・・・)」
「うーざーいっ!」
ビクッ 驚く清子。
振り向くと、そこには清子がいた。
目が回る。
「っへ?わ、私?え、え、ええーーっっ!」
両手で顔を覆う清子。
「うーんと(汗)えーと」
ダブル糸。
そんな単語がふっと頭に浮かんだ。