小さな世界 > 第4章「global」
新しくなって
引き続き、A層『大学講義室っぽい部屋』。
冴子はとても落ち着いて聡明な女性で、さすがの生意気な沙耶子もおとなしく緊張して座っていた。
「―・・・花の宇宙。「花宇(かう)」。中国読み「ふぁうー」。
純日本人、中国育ち。母親が大の中国好き。
という設定にしたわ。
そこに、すでに決めてもらった人物設定を当てはめるわね」
・・・
「中国。私も中国好きなんです。偶然かな・・?」
清子が不思議そうだ。
沙耶子「中国なんてぇ~、アジア版「メルティング・ポット(混沌のつぼ。アメリカを悪く言う際に使う)」じゃん。
くっだらな」
サッと清子がたしなめる。
「沙耶子さんっ何もそんな」
「ほんとのことじゃーん 中国なんてさー」
冴子「それで、沙耶子さんには清子さん、に戻ってもらって
あの方、の精霊に会って頂くわ」
淡い、オレンジ色?っぽいでかいバスルーム。
大昔のヨーロッパの貴族が使っていそうな感じのものである。
チンッ
あるベルを鳴らす冴子。
「これを鳴らしてもらえたらいいわ。着替えが済んだら呼んで頂戴」
全く恥ずかしげもなく全裸になる女の子ふたり。
これはどうやら「沙耶子」が影響していると思われた。
・・・
白衣のポケットに手を突っ込み、冴子は言った。
「理想に還りなさい。そして、創りなさい。そして
持続なさい」
スルッ
簡単に両手をポケットから出し、ふたりに両手の平を見せた。
ビリビリッ
キュルッ
シュワッ.....
何と表記していいのか分からない音が流れた。
!
冴子が驚いた顔をした。
そこには世にも美しい女性「花宇」がいた。
人格操作や、人格統合をしたからか、かなりの垢が噴出し、
ず~~っとごしごしとお風呂で体を洗うことになった「花宇」。
・・・
目が点になる彼女。
普通はこういうの「取り乱す」とかになるはずのに
自然な感じがする。
生まれ変わった?んだなぁと思う「花宇」。
何処かの待ち合い部屋。
テーブルはとても大きく、調度品も豪華だ。
部屋の明かりは薄いオレンジ色である。
花宇「(豪華なんだけど、どことなく作りものっぽい 気のせいかな?)」
チャンッ チャンチャカッ
チャンチャンッ
!
花宇はさすがに青くなった。
「(西洋風の部屋に琴の音!)」
お待たせしました。
丁寧にドアを開ける人物。
その人物は向かいの席に座った。
ニコッ
・・・
・・・
・・・
火照る花宇。
「(何て優しそうな笑顔・・・)」
コーヒーにクリープを入れてカチャカチャかき回す。
「諭弦(ゆずる)と申します。ここの主の、家来と申しますか・・・
そんな感じです」
「琴の音は気になさらず。主は琴が今聴きたいみたいで」
花宇「え?」
・・・あちこちに、琴の音が響いているはず。
あの方の音楽がこの世界に響くのです。
庭園に出るふたり。
花宇「(洋風の部屋の外が日本庭園・・・)」
やはり驚く。
ニコッと優しい笑顔を絶やさない諭弦。
諭弦「この世界は現実。空想に思えるものは、「現実であらねばいけない空想」です。
B層以下は作りものですが、ここは「現実」。
空想ではなく、現実にいなければいけない人間たちの住まう場所・・・」
「・・・私は『主』の創った精霊ですからカウントされませんが」
花宇がう~ん?と考える。
・・・「精霊って現実にはいないですよね(汗)」
諭弦「いませんよ。だから私は『いない存在』なのです」
花宇「(・・・人間に期待を捨て始めてるのか。だから精霊を作って・・・まがいもの?だけど)」
主の意思を感じる花宇。
諭弦は、「現実であらねばいけない空想」。
そういうことなのだろう。
花宇「主さんには あ、会えるのですか」
思い切って聞いてみる。
軽く左右に頭を振る諭弦。