短編集Tanpenshu
悠久を織るWeaving eternity
- 第11話:忠義
この話は「第8話:グルアとティアナ」という話の後日談のようなお話です。
犬関係のお話。
『人はいつか裏切るかもしれない。
でも、絶対裏切らないのが「犬」なのです』
「くっだらないわ!」
目の前のテーブルにパサッとパンフレットを投げる彩織。
先程、「お餅と鶏の揚げ包み焼き」を作り、あまり出来が良くなくてご機嫌ナナメになっていた。
「犬なんて。所詮犬~なのよ。
ご主人様だって『強く』なきゃ駄目なんでしょ?
序列で決めるなんて最悪~」
もぐもぐ
もくもくと彩織の「失敗作」を食べる悠悟。
彩織の目の前の白いテーブル。
昼に買ってきた『ゴルゴ13』130巻と、
「犬の十戒・猫の十戒」というパンフレット。
が。置いてある。
『ゴルゴ13』の130巻は「黄金の犬」という話が載っていた。
任務完了後にゴルゴは、任務のために素晴らしい働きをした犬たちに「或る」命令を下す。
犬は主人と決めた人間を何処までも追う習性があるため
そのままにしておけば、ゴルゴを何処までも追ってしまい、
結果的に敵に居場所を知られてしまう危険性を作ってしまう。
だからこそ・・・。
くぅ~ん
最後の別れ。
この世から去ることの悲しみではない。
主人と別れることの悲しみの声であろう。
(何だこのナレーションは)
パラシュートで去るゴルゴ。
直前に犬笛を吹く。(犬にしか聞こえないという笛)
合図、である。
一斉に崖から飛び降りる犬たち。
命令に従った。
今後、本能でゴルゴをどうしても追ってきてしまうだろう。
止むを得ない事情で、「そういう命令を出」さざるを得なかった。
犬たちはその命令を飲み、実行。
「短期間でこんなに犬たちと信頼関係を築くとは」
「奴は東洋の悪魔か?」
呆然とする敵たち・・・
グルア「これは、、紙の上に描かれているとはとても思えない、素晴らしい草子(本)ですね」
グルアが感動している。
でもそんなの二次元のお話だしっ。
「主人」てやつになんないと駄目なんでしょ?
強い人間だから、「ゴルゴだから」てのが。気に食わないわ。
と彩織。
ティアナ「強い人間に付くのは当たり前じゃなくて?」
妖艶に肩肘をついて言うティアナ。
壁に寄り掛かっている。
ちなみに今はグルアとティアナは人間化し、カジュアルな服装をしている。
黒いワンピースにふっわふわ黒カーディガンのティアナ。
白いTシャツとズボンに、ふっわふわの白いカーディガンを羽織るグルア。
(ふたり(二匹)の性格を表しているかのよう)
ティアナ「それに。御上(おかみ)には誰も勝てないわ」
ティアナは悠悟(=御上)ラブラブだ。
まただ~という顔をするグルアと彩織。
グルア「貴女の御上への忠義心は分かりますが、草子の人物と比べても・・・(汗)」
ティアナ「だって~凄い凄い言うんですもの。
んくっ」
片手に持っていたワインを飲むティアナ。
う"っ んっ
ゴルゴ13の「黄金の犬」を読んですっかり感動してしまい、涙をこらえながら続きを読んでいるティアナ。
グルア「ティアナ、ティッシュは御入用ですか?」
いつも勝手にハンカチやらティッシュやらを差し出すと、
「悲しみという目に見えない精神的なものが「物質化」した『涙』を「拭く」という行為を他人が勝手にどうこうするのは無礼よ!」
と怒り狂うティアナ。
(誇り高い・・・)
べっ
べっつに!
御上と私のことと重ね合わせて読んだだけよ!
「カートゥーン(漫画)如きに感動する訳ないでしょ!」
ぐしぐし(手で涙を拭いている)
ちなみに、今悠悟は「日本の神々」と「道教の神々」が合同で主催している宴会に呼ばれ、出掛けている。
(両親が人間ではないので、様々な世界と交流を持たなければいけない)
だいぶ前にお誕生日プレゼント(第8話)で色々と時を過ごしたグルアとティアナ。
そういえば
「ふたりは兄妹なの?それともなんなの?」
疑問に思う彩織。
振り向くふたり。
ティアナ「パートナーかな」
グルア「犬の頃に、、まだ狛犬に成る前に縁あって御上に引き取られ、
以後一緒にいるようになりまして・・・
戦友と言いますか。朋友のような関係とでも言いますか」
ふぅん
「夫婦か何かだと思った」
優しい男性をそのまま形にしたようなグルアと、
気の強い女性をそのまま形にしたようなティアナ。
グルアは語る。
悠悟はティアナをとても可愛がり、
ティアナも悠悟が大好きだった。
ずっと、ティアナの旦那様は御上ただひとりです。
ニコ、と微笑むグルア。
ハッ
思い出したかのようにティアナが言う。
「月まで脱走したことあったけど。
あなたが勝手に御上と仲良くしてたからよ」
ツンッと横を向くティアナ。
ジャスミン茶を飲む彩織。
悠悟が向かい側のソファーでうたた寝している。
そもそもグルアとティアナを出したのは「彩織が退屈しないように」であった。
宴会から帰ってきて、スッとふたり(二匹)を引っ込めた悠悟。
すぅ
ぐぅ。。
良く分かんないけど
主人に忠実なんだってことは
「(良く分かったわ)」
まっ
「(悠悟の主人は私だけどね)」
フフッと笑う彩織。
BACK「ドビュッシー」 NEXT「真織」