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目次 >> RO物語本編 >> 夜桜の精夜桜の精Spirit of cherry blossoms at night
- 第21話:リリアの記憶
リリアが12歳になった時、ヴィンセントが神妙そうな顔をして
リリアの部屋に入ってきた。
「ヴィンセント様、どうなさったのでしょう」
青い顔をなさって
「リリア・・・」
そう言って、ヴィンセントはリリアを抱きしめた。
その腕に、力はあまり入っていない。
何かの風邪?病気でも、、
部屋に入った時の、とても青い顔を思い出し、
リリアは不安になった。
「多分、俺はもう駄目かもしれない」
駄目?駄目って何が
「ヴィンセントさ、、、」
最初で最後の口付け。
気付いたのは去年からだ。
誰にも気付かれていない。
「・・・まさか」
ああ、多分来年まで持つか。
この世界には不治の病がいくつかある。
それらはヒールなどの回復魔法や回復剤でも回復不可能だし、
放っておけばそのうち治るという類のものではなく、
治癒不可能の、そのまま亡くなるというのが確定しているもの、である。
去年、つまりリリア11歳の時、ヴィンセントは妾をリリアを除いて
全員引き払わせていた。
その頃、確かにだいぶ顔色が悪くなっていて、屋敷の人間は心配していたのだが、
彼は ルーンナイトの任務がきついから、と言って誤魔化していたのだ。
(※ルーンナイト=騎士系の最上位職)
リリアが13歳の時。
ヴィンセントが亡くなった。
「(私は両親に売られたから)」
行くとこなんてない・・・
ズシッと重い金銭が入った袋を見つめる。
「(・・・親戚が家を継いで、、私はお金をたくさんもらって
追い出されたのね・・・)」
・・・
マリアン
何してるのかなあ
また会えるかな?
ドサッ
道端に寄り掛かるリリア。
ヴィンセント様・・・
長い長い長髪が素敵だった
何処にいるの?
『一生私に指一本ふれないで!』
「(指をさして言ったわ・・・)」
『分かった』
あっさり言った。
『おまえがそう望むのならそうしよう』
あの満面の笑み。
私・・・
好きだった・・・のかな、、少しは。
超低温火傷。
今になってヴィンセントに深い深い恋をしてしまったリリア。
でも熱い想いが・・・強制的に冷やされる
私は独り
愛する相手はこの世にいない―