嫌だったら嫌だったら嫌だったら嫌なのーっ!!!
エリザはさっきからず~~~~っと わざわざ寝室から持って来た枕を
リビングのソファーに打ち付けていた。
うーむ。
ウィリアムは困った。
「(姉に会うだけなんだけどなー)」
エリザとウィリアムは聖職者と騎士。
夫婦である。
子供が3人。
うちひとりは幼い頃にある動物にさらわれてしまい、ふたりは傷心の時期を乗り越えた同志であった。
「安寿と厨子王(by 山椒大夫)みたいにぃいぃい あんな風なんだもん。姉弟って」
エリザは自分に兄貴がいるのを棚にあげて(ナイトライド氏という)
ウィリアムの姉にすさまじい憎悪・・・?を向けていた。
年賀状をもらいに行く&バレンタインのチョコをもらいに行くだけなのだ。
年賀状は、「何でお姉さんから届いてるのよおおぉおおお」と
一日中不機嫌になった挙句に いかにウィリアムを愛していないかを延々と語りだすので
「これは姉から直接もらった方が早い」と判断して、毎年直接もらいに行くのだ。
「ブランシェ(ウィリアムの姉)が風邪気味で会えないから、ブランシェの家に直接行かないと駄目らしい」
と聞かされ、(略)
むす~っとするエリザ。
・・・
ブランシェが未婚なのが不安なのである。
「(おうちにはブランシェさんひとりだわ。じゃーふたりはふたりっきり?
別にどーってことないけど、光景的にすごくイヤだわ)」
さっきまで・・・モスラ~やモスラ~に出てくる怪獣のようだったエリザが(歳がバレる)落ち着いてウィリアムに聞いた。
「お姉さんがいなくて、さびしいなーとか
構ってくれなくてさみしいなーとか」
ちっちゃい頃、、青年期、、少年期とか
ある?・・・考えたこと。
どうせあったとしても「ありませんな」
と答えるのを分かってて聞くエリザ。
「どうだったかなー」
以外答えない。
「(ありませんな言ってくれない)」
ムカーッとしつつ もういいやと諦めるエリザ。
ブランシェ「間違った価値観持ってるわね~
まっ、相変わらずってとこね」
ニコッと笑うブランシェ。
ここはフィゲル。空気の美味しい、シュバルツバルド共和国の端っこにある田園都市である。
ハイッ
ブランシェは年賀状を渡した。
あとこれも。
「チョコよ。手作り義理チョコってやつ」
ふふっと笑う。
「サンクス」
早速チョコを食うウィリアム。
私にやきもち妬いてるっていうより、、
メディアとかの間違った「姉弟像」に侵されてるんじゃないかしら
ぼうっとレストランの窓から見える風景を見ながらブランシェが言う。
「これはお酒入りですな」
はぐはぐ
聞いてないウィリアム。
小説とか映画とかの美しい姉弟像なんてそうある訳ないのにね~
「あるかもしれないけど多くはないだろうね」
うんうん。
でも「山椒大夫」だっけ。
安寿と厨子王の。
あれは私好きだった。泣いたわ小さい頃。
ふふっと笑うブランシェ。
ブランシェは修羅と言って、モンク系の最上位職に就いている。
(はだけた衣装だが、今日はちゃんと暖かい服装をしている)
あれは良かったですな。
・・・
そのうち何とかなると思ったケド
結婚してもう19年でしょ。
「20年くらいこれじゃあどうしようもないわね」
苦笑して肩をすくめるブランシェ。
結婚して2年目に子供が生まれ、その子が今17歳である。
「うむ」
ウィリアムは特に気にしていないようだった。
姉と仲良くなって欲しいだとか 姉への対抗心を収めて欲しいとか
な~んにも思わずに
「年賀状とチョコ取りに行くかー」
とトットコトットコ 毎年呑気に姉の元に行っていたのである。
そういえば
「風邪は大丈夫ですか」
わざわざフィゲルにまで足を運んでくれた姉を気づかうウィリアム。
大丈夫じゃない、って言ったら看病してくれる?
ふふっと笑うブランシェ。
看病します。
機械的な声を出すウィリアム。
「大丈夫よ。
年賀状とかチョコ渡したらすぐ帰る予定だったし。
フィゲルは空気が美味しいから気分が良くなると思って」
レースでもしますか!
ウィリアムが提案した。
フィゲルにはモンスターレースなるもの(競馬を可愛くしたもの?)がある。
「いいけど。
エリザさんに怒られない?」
親しくしすぎることがバレると モスラ~やモスラ~ の怪獣になってしまうのだ。
エリザ。
じゃあキャンセルで。
あっけなく自分の提案をポイッと捨てるウィリアム。
エリザがベッドでぬいぐるみと一緒に寝ている。
細かく言うと、寝た振りをしている。
夜になったから寝ようとして欠伸をしながら目をこすっていると、、
私はこのウィリアム君(ぬいぐるみ:皇帝ペンギン)と寝るの!
「偽ウィリアムは来ないで!!」
バサッ!!
掛け布団を乱暴に掛けてスピーと寝た振りをした。
「(皇帝ペンギンは親も可愛いよねー)」
いつぞやテレビで観た皇帝ペンギンの子供を思い出して和むウィリアムであった。
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