傷心の喬一(シャオイー)と美織(メイチー)は
まずアナログでぬいぐるみを作り、丁寧に片眼をヴァイオレット、もう片眼をパープルに塗り、
仙術で綺麗に固め、こだわってこだわって可愛らしい人形を作った。
中に香り袋も入れた。(季節ごとに香り袋を変えた(季節ごとの花の香りのものにした))
その双子の人形を喬一の住み処の大切な箱に入れた。
美織 → こだわって綺麗に装飾する係
喬一 → 汚れたらすぐに洗ってあげる係
事前に撮っておいた写真、ローザからもらった写真、動画たちを、綺麗なアルバムに入れて、たくさん装飾した。
下界のイズルードの海をみつめながら人形を抱いて、、メイチー(美織)は言った。
海が恐かった。
ざざ~ん
今も・・・
横のシャオイー(喬一)を見る。
この人も海みたいな人だと思ったことがある。
つかみどころがなくて 飲み込まれてそのまま御免なさい、って走り出して逃げたくなるような
「・・・」
シャオイーは黙っている。
「まぁ・・・そのうち癒えるよ」
かなり無理した笑顔で言う彼。
シャオイーさんは子供たちがいなくなって悲しくないのでしょうか
静かに言うメイチー。
「悲しい ・・・・・・」
その顔は 全てを捨て去った人みたいであった。
・・・
「ど、どうして何も言わないの。
溜め込んでいるように見えるの・・・」
「ためこんでるねー」
あんなに。考えた名前。
・・・
陣痛って『案ずるより生むがやすし』になるのか、
そのままパタッと死んでしまうのか
(不謹慎)
色々考えて・・・それで結局何とか生んでた。
幸せすぎて、何か怖いと思ったんだ。
このまま、夢から覚めてもいいやって。
両手で顔を覆い、ふぅ、と色々思い出すメイチー。
気が付くと、
シャオイーの肩に寄り掛かって寝ていたメイチー。
海は、知ら~んとでも言いたげにどっぷり、ざざーんと流れている。
同じ流れは生み出さないのに
遠くを見つめるメイチーとシャオイー。
現実逃避する母と、現実をしっかり見つめる父。
子供が出来る前は真逆だった。
(メイチーは現実受け止め型、シャオイーは現実逃避型)
何があっても、もう二度と戻ってこないのだ。
あの子供たちは。
涙を一粒でも流せば、死んでしまいそうだから
思い留まった。
皮肉な話だ。
子供がいなくなって、初めてふたりは「大人」になったのだ。
神々は人間と同じところに住んではいけない。
だから本来住むべき場所へと移り住んだ。たったそれだけのことである。
ただ、シャオイーとメイチーの間の真実は、、
確かにあった紫の結晶は・・・
「確実に『在った』もの」として
永遠にふたりの心に刻まれることになる。
ふたりだけでなく、多くの人々の心に。
限りなく ずっとずっと永遠に。
海。
生命の源。
そしてもうひとつ、掛け替えのないものがが加わった。
この世界で・・・
「賢者がいる」
人間たちを見守ってくれている、
二神の神々。
双子の男女。
いつか無になってしまうかもしれない。
世界が終わってしまうかもしれない。
でも
あのふたりはずっと生きているのである。
無の世界の更に上に。
(了)
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