少し、肌寒い。
スサノオと、宗像三姉妹は、
近くの森にあった樹で、即席で作った大きめの机を囲み、
何故か近くにあった、大きな石を椅子にして座っていた。
根の国へ行く地図を、三姉妹の詳しい話を元に一生懸命作り、
うーん・・・と悩むスサノオ。
紙と筆などは、
事前にたぎつちゃん(末娘)がたっぷりと持っていたのである。
トントンッ、と地図をスサノオが叩いた。
「早く根の国行きたいなー」
きゃあきゃあと、三姉妹(※娘)に母恋しぶりをからかわれ、
反応にこまるスサノオ。
その前に、オオゲツヒメからもらった種をばらまかないといけない。
ここは河の近くなので寒いし、長く話すには適さないが、三姉妹と父(スサノオ)は
いっぱい話し合った。
数十分後―・・・
ちなみにここは葦原中国である(遅い)
スサノオ「ここと、あと この山。そして―」
種まきの場所をひとつひとつ確認していたのだが―・・・
後ろに気配がしたのでくるりと後ろを振り向いてみたら、
三メートルくらいの巨人がいた。
大きな荷物を背負っている。
物怖じせずに、「そっち!」という意味で
「それ、おおげちゅひめさんの!」
とでかい声で叫ぶスサノオ。
背負っていた荷物は、オオゲツヒメの種が詰まっている袋だった。
三姉妹は「おおげちゅ?」と驚いたが・・・
姉妹の誰かがが立ち上がり、
「か、カミムスビ?」
と比較的落ち着いて言った。
スッ...と何度か変わり、その巨人は「可愛い桃色の布が掛けられた板」になった。
宙に浮いている。
この神?は、種まきを代わりに引き受けたい、と強く言った。
「絶対任せて欲しい!」
きりちゃん(長女)が言う。
「何故ですか。わざわざこんなご足労を」
まくのは、恐らく五~六年は掛かるだろう。
それで言ったのだ。
ザーッ、と優しく河の音が響く。
寒いはずの空気が、何となくシャキッとするような気持ちの良い冷たさになっている。
しばらく黙っていた、板姿の神は
『私はカミムスビである』
と重低音で言った。
初め照れて見ていたが、
はるさんとなつさんの、、「男女の結びつき」による生命の繁殖。
葦原中国の『男女』が基盤になっている美しさ。
この国の役に立ちたい。
他に色々言いたいけど・・・
きっと種をまいてみせる
・・・とのことだった。
造化三神は全ての神の上に位置する神で、
その一柱であるカミムスビが、何故ここまで・・・
とスサノオは固まった。
オオゲツヒメからもらった、かけがえのない種である。
スサノオは「いや、自分でやる」と言って譲らなかったが・・・
きりちゃん(次女)が立ち上がった。
「父上!男女の仲の良さに感動なさった、って・・・
あなたの、父上のお父様とお母さまは?
そのことだってきっと」
カミムスビはきっと。
少しして、カミムスビは例の大きな麻袋を、
スサノオは不思議な細い布をカミムスビよりもらい受けていた。