ミカヅチは家を作り、そこで暮らしていた。
相変わらず、葦原中国のどうしようもない荒ぶる神たちを退治する毎日で、
退治するだけというのも芸がないので、荒ぶる神たちを種類別に分けて、書類のようなものを作っていた。
大きいもの、中くらいのもの、小さいもの・・・
俺にしか倒せないもの、
4つに分けて整理していた。
そんな中、可愛い白い鳥、、文鳥のような鳥だろうか。
そのような小さな鳥を可愛がっていた。
悲壮感のあるようなミカヅチが、この白い鳥の前ではすっかり顔が崩れ、
でれ~っとしたような顔をし、
コトシロがたびたび苦笑するのだった。
コトシロは海の風に当たりすぎたのか。
潮が肌に悪いのか、少し成りがボロボロになっていた。
そしてある日ミカヅチにある提案をした。
「そ、それはちょっと・・・」
ミカヅチは青くなる。
コトシロは上機嫌だ。
「退治ばかりじゃ詰まらないだろ?
まぁ他のことも必要だと思うんだよ」
光が良く射す屋内。
その日は日射しが強かった。
家は採光口が多く、家にいるというのに陽があらゆる所から射す。
その、申し出というのは
刀剣の製造であった。
ミカヅチが作った刀剣は、荒ぶる神たちを退治する効果がある。
小さな荒ぶる神なら消滅させることすら出来る。
ミカヅチが退治出来ない場所で、
人間たちが怯えている、荒ぶる神がいる場所で、
その刀を各自の家に備え付けて置けばいいのでは?
人間たちを護るために是非。とのことだった。
驚くミカヅチに
コトシロは「僕たちの社を作って祈りを捧げてくれる存在だよ?
人間は大切にしなきゃ」
と言い、
ミカヅチをじぃ~ん、、と感動させた。
そうして、ミカヅチは刀剣も造るようになり、
こういうのは一旦造り出したらとことんこだわっちゃうから大変だよ、と
質の良い素晴らしい剣を造ることに精を出し始めた。
いつの間にか、荒ぶる神退治はお預けになった。。
ある日―
刀剣造りの作業場から帰ってくる時、
可愛がっている白い鳥が家の前で倒れていた。
作業場は危ないので家に置いておいたのだが・・・
鳥ゆえ、寿命が元々短いのだろう。
それでも普通の鳥の2倍以上は生きている。
ミカヅチは部屋に白い鳥と一緒に入り、
そしてずっとそっと白い鳥を抱きしめた。
すぅ、、という寝息が聞こえなくなるのが怖くて
目の前が絶望的になったが、医療の神であるオオナムチは何処にいるか分からないし
寿命で亡くなる、というパターンなので打つ手がない。
白い鳥が亡くなった記憶をミカヅチは持っていない。
あまりのショックにそのまま倒れて寝てしまった。
ミカヅチの手の平の汗が、白い鳥と重なり
少しの時間が経った後
ぽうっと白い魂のようなものが出た。
小さな女の子で、白い服を着ており
テクテクと歩いて「おとーさまー」と言った。
何度か呼んで、よだれを垂らしながらミカヅチは起きた。
彼女の名前は
白い鳥から生まれた、家族の絆を強くする家庭円満の神である。