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第5章:大国主の話

第9話:男女愛

新解釈の古事記


ヤガミヒメは、いつまで経っても
可憐で素朴な、少女のような女性であった。

国津神なので、歳を取るのが当然遅い。
息子であるコトシロやサクヤヒメたちの姉のようにしか見えない。


・・・
事情を聞いたヤガミヒメは頭をうながれ、青い顔をして涙ぐんだ。
「そ、それがあなたの望むことなら。国に必要なことなら・・・」
と痛々しい感じで言った。

オオナムチとスセリヒメは黙ってしまった。
オオナムチは何かを言おうとし、
スセリヒメは「あの・・・あなたを傷つけるつもりは・・・」と
もらい泣きする始末。

涙ぐむヤガミヒメとスセリヒメの中で、オオナムチはうーん、と頭をかいた。

ヤガミヒメのすぐ傍に、弟にしか見えないオオナムチの長男、コトシロがいた。

彼はこの時、久し振りの帰郷ということで、たまたま実家(ヤガミヒメの邸)にいたのだ。

全員を労り、フォローし、母親であるヤガミヒメを慰め、
父であるオオナムチを軽く叱咤し、スセリヒメに丁寧に挨拶をした。


コトシロは少し強く言った。
「父上は、スセリヒメ様に惹かれているのではないですか?
その証拠に・・・っ」

少し、空気が蒸している。
すでに季節というものがあるのか・・・
今で言うところの六月初頭あたりなのかもしれない。

オオナムチは普段これこれこういう雰囲気なのに、
違和感を感じる。
それは息子だから良く分かる。


根拠をいくつか述べ、そして「父上は本当に愛する人と一緒になるべき」と言った。


立ち上がって言うコトシロ。
「今までは、「子作り」のための妻問いというもの、でした。
しかし、本当に愛する妻、という存在が出来た、と思っています。
その存在は大切にするべきだと思います。

・・・子を作るためでなく「愛」が子を作る―
国を作るものだと思います」

そう言うコトシロに、さっきまでの辛さの涙は何処へやら。
ヤガミヒメは「そうね」と感動した。

愛するオオナムチが、幸せであって欲しい、と心の転換をした。


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愛する心が、「国」を作る。

男と女が、
なつさんとはるさんが愛し合って作られたこの葦原中国。


男と女が愛し合う心が・・・


オオナムチは夕焼けを見ながら思いを馳せた。



スセリヒメは赤く可愛らしい服で、夕陽を浴びながらオオナムチに言う。
「私は都合が良いですよ。
猫、ですから。種族が違うから何か不思議な感じがして「焼き餅」みたいなものを
妬かないのです。

同じ人間だったら辛いんでしょうけどねー」

砂のような場所を歩きづらそうにサクサク歩くふたり。


オオナムチは、女は子供を産む道具だと思っていた。
というか、そう思わざるを得ないし、そう教えられてきた。

が、子供とか関係なく、本当に人を(猫だけど)愛するというほのかな喜びを噛みしめ、
スセリヒメと共に妻問いの旅に、出た。


スサノオの血を残すため。
父の願いを達成するため。


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丁度この時、「犬」という動物も生まれ、
優れた五感で以って、地図だけでは辿り着くのが一苦労、という場所を
難なく、オオナムチたちを誘うということをした。

オオナムチはこの「犬」にスサノオの気で作られた動物「狼」を連想したが、
少し優しいので「ツクヨミさんなのかな?」と思った。


第5章:大国主の話「第9話:男女愛」


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