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ふることふみ

新解釈の古事記 
TOP章ごとの目次第3章:神々の物語

第4話:涙の海


あれから数日後。

八尋殿で就寝する三貴神。

なのだが、

夜な夜な、 建速須佐之男命   たけはやすさのおのみこと(以下、スサノオ)
が邸内から抜け出して行くのである。

父であるなつさんは心配をして、
最初は「ちょっと黄昏たいんだろう(夜だけど)」くらいに思って
野暮に追い掛けることはしなかったが、

さすがに心配になって、
ある夜こっそり後をつけた。

寂しい林の隅っこで、何だか泣いている感じのスサノオがいた。

なつさんはそっと引き返し、
「あの泣き方は覚えがある」と思った。



数日前―

なつさん『長女の君は・・・アマテラスか。
えっと君はね。
国津神(地上の神)じゃ収まらない器だから。
・・・申し訳ないけど、高天原の・・・天津神・・・いや高天原を治めなさい』

ビクッとしたアマテラスだったが、
『は、はい』と言った。
天照大御神   あまてらすのおおみかみ という名前が付いちゃってる訳だから。
うん。太陽神として世を照らすように。

そしてツクヨミの方を見て言った。
『君はね、もう 月読命 つくよみのみこと という名前が付いちゃってる訳だから。
やはり高天原に行って、夜の国を治めなさい』

『はい』
とツクヨミは落ち着いて言った。

そして君は―・・・
なつさんはスサノオの方を見て、
『荒ぶる海なんかどうだ』

陸よりも遥かに大きい海。
荒ぶる、なのだから嵐の神も兼ねている。

『はいっ!』
スサノオはハッキリと返事をした。



・・・
そんな、数日前の思い出を思い出すなつさん。

スサノオは毎夜毎夜、毎晩ではないが―・・・
よく八尋殿を抜け出して泣いているのである。


まだあどけない、三柱の中で一番幼い(顔をした)スサノオ。
母が恋しいのだろうか。


しかしなつさんは真実に気が付いた。
自分の気持ちが、スサノオに流れ込んでしまったのだ。

はるさんに会いたい会いたいと、
泣沢女神(なきさわめのかみ)まで産んでしまった自分。

「(それがスサノオに。外見こそは似てないけど、中身がそのまま入ってしまったんだ。
私の)」

スサノオに申し訳無くなるなつさん。

そうしているうちに、アマテラスとツクヨミは高天原に行ってしまった。


スサノオは海を治めていても、いつでもどこでも暗い顔ばかりしていて、
なまじ力が凄まじい分、
スサノオが暗い気持ちでいると海が荒れた。

自分の社(やしろ)にうつ伏せで倒れて泣いている夜は
海は物凄く荒れた。


なつさんは見かねて、
「おまえの姉の、アマテラスに相談したらどうだろう?
彼女は私よりもすでに能力が高い。
アマテラスに相談したら・・・」
とアドバイスをした。

それはいい考えだ、とスサノオは高天原に行った。


なつさん「私もそろそろ引退するか・・・」

もう能力の高い、あの子たちの時代。


ここ(地上)にいればいずれ寿命というものが来て、黄泉の国に行ける。
はるに会える・・・


第3章:神々の物語「第4話:涙の海」


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