第14話:宝剣
尻尾の大きさは横十三メートルはあるだろうか。
難なく、目的の尻尾を見つけるスサノオ。
(尻尾ひとつにつき十三メートル、が八つあるのに)
尻尾と胴体の境目。
ガリガリガリッ!と一気に掘ってゆく。
勿論いきなり大穴がボコボコ出て来る感じで、
掘っているさまが全く視認出来ない。
しかし全然宝剣は見つからず、
その辺にある大きな樹やら石やらを持って来て
ガリガリガリッ!と掘りまくって掘りまくって掘りまくるスサノオ。
とうとう宝剣らしきものが見つかった。
どうやら刀身の部分らしく、キラキラ輝いている。
しかしクシナダヒメが「スサノオ様ーっ!」と叫んだせいで、ヤマタノオロチが彼女を襲ってしまう。
早くしなければと思った。
ちなみに「スサノオ様ーっ!」という叫び声(スサノオは地獄耳)を聞いた時
急いで、ヤマタノオロチの胴体の森の、大石を大蛇たちの顔に超剛速球で投げたのだ。
大蛇たちは血を流し、混乱して、一匹一匹が違う方向に動いた。
一匹の大蛇ならともかく、八つの頭があって、ひとつの胴体。
あっちへ行って、こっちへ行って。
と混乱しながら動けば、結局どこへも行けないだろう。
かと言え、うかうかしてられない。
バッ!と一気に刀身を引き抜いた。
「いってぇえぇぇぇ!」
スサノオは絶叫した。
物凄い速さで刀身を抜く、詳しくは言わないが、これは・・・という感じである。
その声でヤマタノオロチの体に大きな振動が出来、
大蛇たちが振動の源を探した。
急いで柄の部分に手を持ち替え、しかし痛くてすぐに膝に柄を打ち付けた。
一番大きな尻尾があるのなら、
「一番大きな大蛇」もいるのだろう。
それが「本体」なのだろう。
その、一番大きな大蛇の首をはねていた。
刀身を引き抜き、柄の部分に手を持ち替え、痛さで剣の柄を膝に打ち付けるまで。
・・・この三秒間の中で、である。
大蛇たちが、、ヤマタノオロチが前に倒れてしまうので、
急いで下にピョンピョンッと降りてゆき、かろうじて遠くに見えるクシナダヒメと両親を、少し大きい木箱に入れ
担いで持って行った。
うっうっ......
と安堵の涙で息も出来ない、クシナダヒメの母親。
クシナダヒメは、余計なことはしてしまったけれど、
生きた心地がしなかった、と必死に苦しいのを我慢するような顔で泣いていた。
何故かヤマタノオロチは前方向に倒れず、斜めに倒れて
クシナダヒメの家は無事だった。
スサノオはとにかく手を何とかして下さい・・・と息も絶え絶えに言っていて倒れそうだったので、
急いで家に入れておばあさんとクシナダヒメは丁寧に手の傷の手当てをした。
クシナダヒメはずっとじわっと涙を浮かべて、それを拭いて、を繰り返していた。
命を助けられた感謝の気持ちと、スサノオが無事だったことの喜びの涙である。
あんまり泣くので、スサノオとおばあさんはどう慰めていいか分からなくなった。
「宝剣、頂きましたよ」
スサノオが胡坐を掻いたような格好で言う。
スッ、とクシナダヒメとおばあさんの前に剣を差し出す。
刀身の部分を包む、鞘もすぐに発見されたらしい。
土でだいぶ汚れている。
「開けてみますか?」
スサノオが言った。
第4章:葦原中国での話「第14話:宝剣」
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