第18話:薄味で
出雲地方、建設途中のスサノオ家、、ではなく、邸でもなく、
『宮殿』はちゃくちゃくと完成していった。
彼は造る能力だけでなく、建築の上での設計、配置、バランス、実用性などを兼ねた
建築士的な能力も持っていた。
配分:8のため、物質(生産性)を生み出す能力が(略)なのだろう。
当然、設計を考えている時は件の布を外し、
実際に建築作業をする時は、布を巻いた。
(巻かないと、宮殿が壊れてしまうから)
クシナダヒメは動きやすい服に着替え、
建設中の宮殿の横で、せっせと稲作をしていた。
あまり知られていないが、クシナダヒメは稲作の女神なのである。
少し遠くに、稲以外のものを植えている畑もあった。
とても小さいが。
ある日、宮殿の屋根の上から、隣の、一生懸命稲作をしているクシナダヒメを見て、
スサノオは「(可愛い姉上だ)」とときめいた。
(※スサノオの名誉のために。決して変な意味ではない)
今まで自分は、好き放題やってきた。
守るものがなかったから。
しかし期せずして、守るものが出来てしまった。
俺は自立しないとな。
フゥッ、とため息をついて、スサノオはクールに思う。
ある夜の夕食。
スサノオは着替え、現代で言うところのダイニングルームに向かった。
クシナダヒメが作った料理を、美味しそうに食べた。
早食いをせず、お行儀良く食べるようになった彼。
「薄味すぎる!」
といつも通りの文句。
「そんな!塩をたくさん、海から採ってくるの大変なんですよ!」
と必死で訴えるクシナダヒメ。
スサノオは頭悪くぶーたれた。
食卓も、椅子も、とても綺麗で全て(お皿も含めて)スサノオが作ったものである。
・・・俺の方が(料理)うまいんだけどね・・・
させてくんないし
とぼそり。
クシナダヒメが声を荒げた。
「せ、折角、頑張ったのに。
お嫁さんになったから・・・」
と涙ぐむ。
「お嫁さん?
・・・いつからそうなったの(汗)」
スサノオは驚いた。
「い、一緒に暮らして、、だからっ」
しーん・・・、となる食卓。
スサノオは思い返す。
確かに、俺に気があるみたいだから、と
根の国に行くの諦めたんだっけ・・・
それでこうして、一緒に(出雲で)暮らしている。
「(しかし、別に結婚してる訳じゃあ・・・ないしなぁ)」
窓から外を見る彼。
クシナダヒメが御免なさい、だの忘れて下さい、だの
たくさん言っている訳だが・・・
スサノオが何も言わないので、恥ずかしさでそのまま固まってしまい、真っ赤になるクシナダヒメ。
スッとクシナダヒメを一瞥し
「結婚してもいいよ
・・・でも俺苦労するよ
それでもいい?」
とスサノオ。
目を回し、食卓に両手を付いて体を支えるクシナダヒメ。
第4章:葦原中国での話「第18話:薄味で」
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