第5話:ツクヨミ
三姉妹は「宗像三女神(むなかたさんじょしん)」と言った。
道の神様で、あらゆる『道』に精通していた。
ツクヨミ「(いずれ・・・根の国?に行くのだろうし、
種もばらまくのだろうし)」
スサノオの母恋しぶりを知っているツクヨミは、
世界のあちこちにあり、且つ探しにくい『根之堅洲國(根の国)』へすぐに行けるようにと、
スサノオの娘たちを連れて来たのであった。
「(惜しいな)」
弟ながら、非常に優秀な神。
本当に惜しいと思った。
あまりにもでかい麻袋を、三姉妹の末っ子、たぎつちゃん(※愛称)が『小さくなる術法」
を使って、とても小さくした。
と言っても、まだ担ぐくらいの大きさはあるのだが。
わいわいわい
三女神とスサノオがツクヨミの社を出て行くのを見るツクヨミ。
種がちゃんとばらまかれ、そしてスサノオが幸せに過ごせることを、彼は心から祈っていた・・・。
カチャッ
お茶を片付け、
弟と、その娘たちが去って行った後の片付けをする。
まだここ(葦原中国)にいらっしゃいますか、とこの社の守り神が問い、
「いや・・・カグツチの社を・・・見る」
とツクヨミ。
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今日は、雷が鳴っていた。
あの日も。雷が鳴っていた。
彼女は。いるだろうか。
ツクヨミは少し足早にカグツチの社に行った。
ピカッ!と雷は光り、あっという間にザーッと雨が降る。
いた!と思ったら、彼女は前に見た時よりだいぶ幼くなっていた。
幼く見えていたと言うべきか。
葦原中国に火が出来たことをそれとなく感じ、火の神であるカグツチをすぐに知り、
挨拶しに来ているのだが、
一向に会えない、としょんぼりして言っていたのだ。
雨が降っているので、急いで本殿の軒先に駆け込むふたり。
「また会いましたね」
とウルメ。
一度目は偶然に会い、
二度目は、緑色の炎を作ることに成功し、(癒しの炎。高天原限定)
道行く誰かにぶつけて驚かそうと待ち構えていたウルメが、ツクヨミにぶつけた。
たまーに、あなたに会いに来ましたよ。と
無表情でツクヨミは言う。
そしてふたりともまだ、カグツチに会っていない。
ツクヨミがスッと立ち上がる。
「雨が上がりましたね」
びょおぉおぉ...
雨上がりの海。
ふたりは大きな岩の上で、横並びに座った。
「私はあまり目立たない」
雑談を経た後で、
ツクヨミがそう言った。
その声も、別に小さい声という訳でもないのに、とても薄い感じである。
そう。声ですら。
カグツチの話をしていて、自然に三貴神(アマテラス・ツクヨミ・スサノオ)
の話になったのだが・・・
姉は最高神、弟は素晴らしい素質を持っている(何をするかは別として)
・・・と、言っているようなオーラ。
「そこがいいというか。
どういう神様なんだろう、と思われるというのは・・・素敵だと思います」
神秘的で謎があること自体が、目立っている。
し、静謐なことは素敵なことです。
と、ウルメは静かに言った。
第4章:葦原中国での話「第5話:ツクヨミ」
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