第10話:今だけの情報
えーと・・・
右手人差し指を口にくわえながら、
絵本を元にして説明されながら。
頭に染み込ませてゆくイワレビコ。
しばらく経ち、
『アマテラスさんの息子さんが、オシホミミさんで、
地上に降りるのが怖いから、息子のニニギさんを降ろした』
『そうね」
相槌を打つ女性。
『えーと、ニニギさんは顔で女を選んだから人に
寿命が出来た。
出来た息子は~・・・山幸さんと海幸さん。
山幸さんはお兄さんの釣り針を落として・・・
竜宮城で釣り針を見つけた。
そこで豊玉姫と結婚して、
子供産む時にサメだってバレて海に帰っちゃった。
代わりに妹の玉依姫がやってきて、その子を育てた』
『でぇ、そのふたりの間に生まれたのが僕?』
絵本に書いてあることを反芻するイワレビコ。
『そうよ』
と女性は言った。
こ、こんな素敵なお姉さんのま、孫
いや子孫だったのかっ。
目をキラキラさせるイワレビコ。
「僕、頑張ります!
天皇(すめらみこと)になります!」
言葉は格好良いが、子供らしくポーズを決めるイワレビコ。
アマテラス「ツクヨミ!」
三貴神室に続く廊下で、ツクヨミを呼び止めるアマテラス。
「私はただ、その。山にいる三歳の子供、というのが心配だっただけです」
ツクヨミは落ち着き払って言った。
「だったら、山で助ければいいだけの話では?」
三種の神器だけを手渡すつもりが、
どうしても、、と絵本を・・・という訳であった。
立ち止まってしまい、うつむくアマテラス。
後のことはやっておきましたよ。
「絵本の回収。(天皇に即位した夜にツクヨミが届ける)、他言は絶対無用(絵本)。
少し失敗してしまいましたね」
とツクヨミ。
「ええ・・・」
反省する彼女。
そのふたりのさまを、遠くからスサノオが見ていた。
「(何か重要な話でもしてるんだろうなぁ)」
そうして遠ざかって行った。
時は経ち―・・・
初代天皇、神武天皇が即位した。
可愛い顔はどこへいったやら。
鬼も殺せそうな怖い顔で、且つ端正な顔になっていた。
ずっと小さい頃から一緒にいたヨリヒメを皇后にし、ふたりは即位にふさわしい晴天の日を楽しんでいた。
即位の日の夜―・・・
身を清め「即位致しました」という報告を神に捧げるため、
清めた部屋でひっそりと寝る神武天皇。
疲れがあったせいだろうか?
とても疲れ切っていて、誰もが「どうしたの??」というような顔になっている神武天皇。
しかし彼は頂点に立つ人間。
人前では弱さ、疲れを完全に隠している。
・・・
部屋に妙な雰囲気を感じ、バッと飛び起きる神武天皇。
「誰だ!」
そこには、大変美しい神が立っていた。
第6章:天子降臨「第10話:今だけの情報」
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