第11話:神武発進
え?え?
さすがの神武天皇もすごく驚いた。
目の前の神は、神武天皇が落ち着くのを待っているようである。
「あな、あな、あなt・・・?」
しばらくして、その神が、箱を持っていることに気付いた神武天皇。
「(そ、その箱に何が)」
少し落ち着いたようである。
箱のふたを開け、神は丁寧に、箱の中のものを・・・
本当に丁寧に取り出した。
それは、白基調の本・・・絵本?だった。
神はその本を左手で持ち、「これに、見覚えは?」と言った。
「ああっ!」
全然思い出せなくて、記憶の網を引き揚げていた彼だったが、
ようやく思い出した。
「アマテラス様の・・・」
「そして、あなたのことも覚えている。
・・・たしか、姉は急ぎすぎてしまったようですね、って。言ってました」
神は微笑み、「覚えていてくれたのですね」と言った。
絵本をもらった晩、女性か男性か分からない綺麗な神様に、夢うつつの中、
絵本を回収されたのだ。
絶対にこの絵本のことは誰にも言っちゃいけないよ。
絶対にね・・・
この優しい、催眠術?のような声で「絶対言っちゃいけない」という封印が見事付けられていたのだ。
神様は帰った。
絵本を読みながら、神武天皇は何とも言えない表情でその文字や絵を見つめていた。
すぐに絵本を、箱にしまい。
目をつぶって
大事にしよう・・・
と深く思った。
ここに置いておけば誰にも発見されない、という場所も神様から教えられた。
ちなみに、そこから数か月後あたりに、森の中でヨリヒメと三種の神器の話をするに至る。
神様『そこには『真実』が隠れている。
いつか、何代後かの天皇が・・・
その謎を。真実を。
解くことを祈っています』
謎?
『○○はいつでも、あなたを見守っていますからね。
愛しい○・・・』
前に聞いた、謎の言葉。
何故こんな時に・・・
フリーズする神武天皇。
数十年経ち・・・
「イワちゃん、じゃなくて天皇(すめらみこと)」
益々、顔の怖さに磨きが掛かっている神武天皇と、愛らしい容貌のままのヨリヒメ。
ふたりで、崖の上から、かつてふたりが良く森林浴をしていた山を見下ろす。
頭上で鳥が鳴き、
そして前へ進めと、急かした。
ヨリヒメはさっさときびすを返し、後ろに行ってしまった。
それを神武天皇は見守っていた。
進めなかった。
太陽があまりにも眩しくて。
不思議な感じがして。
第6章:天子降臨「第11話:神武発進」
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