・・・
ふと、スサノオは考えた。
確か、男神と女神の交合で、神様を作ることが出来る、ということを知っている。
それが出来たら、一人前だと認めてもらえるのではないか?と。
この頃は、結婚だの愛だの、生命だとかを作るのに倫理や道徳観はだいぶ緩かった。
ふと、父親と母親の愛の何かが―、抱き合ってるような画像が見えた。
とても悲しくて、遠い想い出の日に戻されてしまったような悲しい感覚。
じわっと涙が出て、
その愛らしい機織女に「失礼しました」と謝り、
そして出て行った。
少しして、
機織り場を開ける戸の、別の戸からたくさんの機織女やら神様たちが出て来た。
「うっ、何なの、この獣臭さはっ」
場は騒然となった。
「何なの?この血は!」
スサノオの服から落ちた、鹿や猪の血である。
ここで何が起こった?!
ということになり、残っていた機織女が色々聞かれた。
機織女は必死にスサノオを庇ったが、
みな、可哀想に、と慰め、避難させた。
アマテラス「あなたは何もしていないということは分かっています。
ですがもう、これ以上あなたを庇えません」
スサノオはうなだれた。
本当に彼は、乱暴狼藉をしているつもりはなかった。
ただ、精神:肉体、の配分が9:8であるあまり、8の力が強大すぎて
すぐに物が壊れてしまうのである。
ちなみにスサノオの精神「9」については毘沙門天と同じで、
悪を打ち負かすことで、善を守る、という概念。
スサノオ「ひとつだけ、頑張ったことがあります」
そう言って、スサノオはくるりと後ろを向いた。
「きりちゃん、しまちゃん、たぎつちゃん」
すると・・・
三柱の、美しい女神が現れた。
スサノオは向き直って、自分の前に三姉妹を並べ、
「姉上の勾玉を・・・あの桃色の勾玉を砕いて、自分だけの力で神を作りました」
と言った。
「なんて・・・」
アマテラスは感動した。
彼は自分の剣を取り出し、
「もう暴力は捨てます。武力は捨てます。この剣を姉上に預けます」
と、アマテラスに剣を渡した。
そして自慢の娘たちをアマテラスに預け、
「さようなら」とスサノオは去って行った。
アマテラスはスサノオの剣を見た。
「こういう剣があるのは危険だから、処分した方がいいですね」
そして三姉妹を見て、ムッと闘争心が湧き、
私も立派な神を、と、バリバリバリッ!と剣を砕き、プーッ!吹いた。
五柱の男神が生まれた。
盛夏のような三姉妹と、
初夏の香りのする五兄弟。
そういえば・・・
「(スサノオが、母親のことで吹っ切れたような顔をしているのが、
不思議だった。けど良かった・・・)」
と安心するアマテラス。