ウルメは高天原の「火の神」である。
生みの親はタカミムスビだ。
カグツチは葦原中国の「火の神」である。
火は浄化の火であり、食べ物を温かく煮てくれる優しいものでもあり、
暖をくれる温かいものである。
同時に、全てを焼き尽くす恐ろしいものであり、その恐ろしさは
神を弑することが出来る、という領域にまでいっている。
はるさんは、そんな凄い(色んな意味で)ものを、
命をかけて地上にもたらしてくれたのだ。
文字通り命をかけて。
そしてカグツチは、三貴神を産むきっかけになった神であると同時に、
あまり注目はされていないようだが、かけがえのない神なのである。
そんなカグツチに、ウルメはずっと会えなかった。
地上の火を見てみたところ、とてもバランスが整っていて美しい火であることが分かった。
天上の火は、強すぎたり癒しが強かったり、天上のみの超常現象的な力が激しすぎて
或いは別の部分が弱かったり、・・・・・・とにかくバランスがあまり良くなかった。
そんな強すぎる天上の火であるウルメと、
反対に、静やかで消え入りそうなツクヨミの間に子が出来た。
太陽の男神、
天体に、燃え盛る火を灯して、=太陽になったのだろう。
母であるウルメは彼女自身が「火」のため、
同じ属性である?「太陽」を産むことが出来た。
火、そのものは葦原中国にはどうしても負けてしまうが、
太陽は、高天原の役目なのね、産むのは。とウルメ。
精神と肉体の配分は、
「10:8」
アマテラスの精神性と、
スサノオの物質性。
両者を兼ね備える、至高の存在であった。
ツクヨミは気付いていないが、
一番目立たなかったはずのツクヨミが、
とても目立つ子を成したことになる。
アマモは太陽の神殿に行き、
アマテラスの補佐をした。
アマテラスはいずれ、自分の後継者に・・・とアマモを考えていた。
太陽神が二柱いるという事実は、
高天原の神々にとって例えようのない幸福感と喜びを・・・あふれさせた。
ツクヨミとウルメにはもう一柱、神が出来た。
その直前まで、世界が妙に、もたれかかっているような不思議な感覚があり、
皆が不思議がっていたが、その日を境に、その現象が収まった。
・・・
生まれた子は、何故かすぐに名前を付けるべきなのに
全く名前が付けられなかった。
頭から記憶がすぐに消えたり、文字を一時的に忘れてしまったり。
ツクヨミとウルメはとても恐怖した。
生まれたのは男神だったのだが、
彼は生まれてすぐに剣を取った。
剣は神聖で、剣を持っている間は、「精神:物質」配分が他人から見えない。
ぞっとするツクヨミ。
生まれながらにして、色々知っている存在。
そんな・・・ひとりしかいないはずなのに、・・・
それは姉のアマテラスだ。
しかし。
彼からはアマテラスのような「光」は・・・そういうのは感じられない。
逆方向の強い力だ。
それも、本当に途方もなく・・・。
ウルメは思った。
均衡なのだと。
アマモと均衡を取るために。あの子は。
気付くと、ツクヨミとウルメは目を覚ました。
ふたりは、ふたりめの子が生まれたことも、目が覚めるまでのことも
全く覚えていなかった。