緋和真神(愛称:アカナゴマ)の社内―
手をパンパンッ、と軽く叩き、
目をつぶり、何かをとらえ、様々なことを占っている。
あ・・・
・・・
ジャリッ...
アカナゴマのいる、東北あたりにある、小さな小島。
そこの、社。
カグツチが立っていた。
周りは、綺麗に整えられた林で、
島に唯一ある道を、テクテクと歩いている。
くるりと誰もいない室内で振り向き、
また来たのかと思うアカナゴマ。
最も、彼の存在を誰も知らないので、
知り合いがいることは・・・悪くはないのだが。
アカナゴマ「要は、何故太陽の男神が出来たということだね?」
腕を組みながら、アカナゴマの部屋で「うん」とカグツチは言った。
ずっと、高天原の火の神が、自分の社に来ていたことを知らなかった。
その女神が何故、唐突にツクヨミと子を成しているのか
太陽神が生まれるのは、理屈的に分かるが、
「何故配分がアマテラスを超えているのか」
意味が分からず、こうしてやって来たらしい。
ちょっとしたやり取りの後―・・・
アカナゴマが占う。
「・・・」
アカナゴマは目を開いて黙っていた。
そしてすでにカグツチの前に置いてあるお茶を、
さらにカグツチの前に、ずずい、と置いた。
アカナゴマが言うには。
愛し合う男女が、時に普通の存在を遥かに超越した存在・・・色んなもの
神とか島とか動物とか・・・様々な素晴らしいものを産む。
ぐっ、と握りこぶしを膝の上に置き、
とても深く愛し合ったんだと思うよ。
そのふたりは・・・
と切なげに言うアカナゴマ。
彼は母親(はるさん)にこの島に預けられたはいいが、
そのまま父親に自分の存在を知ってもらえないまま、今に至る。
少し複雑な思いを抱く。
お茶を飲まず、だらしなく座りながらエア肘つきポーズをするカグツチ。
「三下でも、深く愛し合えばいいのか」
三下とは例えであって、
どういう存在でも、「深く愛し合う」といい存在が。
ということを言っている。
綺麗に整頓され、空気までピカピカなアカナゴマの部屋で、だら~んとしながら
「それに比べて・・・(俺は・・・)」
と言った。
少し下を向き、真剣な顔をしながら、
考えるカグツチ。
『次の生まれる子は「火の神」です。
産んではいけません』
とアカナゴマが母に言ったこと。
母が神避りをしたこと。
父が「おまえのせいで!」
と言ったこと。
アカナゴマは語った。
あることをすると、とても不吉なことが・・・ということ。
それを無視して母親と父親がカグツチを作ったこと。
「そういった意味でも、君は、特別な存在なんだよ。
だって、そういう存在って、子供たちの中でも。
ひとりだけだよ・・・」