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第5章:大国主の話

第7話:スサノオ邸

新解釈の古事記


度数の低いお酒を飲みながら、スサノオは続ける。

根の国に行く直前の場所で見つけた白猫。

丁度世の中で「猫」という動物が生まれた頃だった、と振り返る彼。

ヒトガタ以外で、「動物」という存在がたまに生まれたりするのだが、
緊張状態だとか元気のある空気が満ちると猛禽類のような動物が生まれ、
のほほんと癒し状態になるとリスとか可愛らしい動物が生まれる。


鹿などがアマテラスの神々しさから生まれた動物で、
熊などがスサノオの勇猛さから生まれた動物であろう。


その「猫」を気に入り、一緒に暮らしていたのだが、
寿命が短く、長く生きられなかったため死んでしまった時は悲しく、
涙と鼻水で、猫を土台に神様を作ってしまった。

それが須勢理毘売命 すせりびめのみこと(以下、スセリヒメ)だ。と


クシナダヒメの時もそうだったが、
かよわい猫を根の国に連れていけないからと一緒に暮らす―・・・

弱き者のためには、自分の時間をたくさん削ってもしょうがないと諦めるスサノオに、
話を聞きながらオオナムチは
「女性に優しい・・・弱き者というべきか。子供とか・・・いや
(そういう人に)弱い人なのかな?」
と思った。


スサノオは、子孫と言えどフユキヌとオオナムチの「子孫をいっぱい増やす」というやりとりに
介入というか色々口出しをしたくなかった。
それはそれで、と思いつつ、
子供を作るのは大変だろうと考え、何か手助け出来ることはないだろうかと思った。


スサノオは隣に座っているスセリヒメを見て、再度前に向き直り、
うーん、、と考え込んでからオオナムチを見た。

何度見ても、ツクヨミにそっくりなオオナムチ。
静謐なツクヨミよりも愛嬌があり、少し違うのであるが。



スサノオは、
ひとり「伴侶・或いは配偶者(正妻)」と呼ばれる存在を作り、
その上で妻問いをしてはいかがと提案した。

それに我がスセリヒメは適任ではないかと。

スセリヒメは多少驚きつつも、黙って聞いていた。

「・・・ヤガミヒメを因幡に待たせているのですが。
・・・あの方が私の正妻というか、そういう役割?を担っていると
考えておりまして。すみませんが」
やや下を向きながら、気を使って丁寧にオオナムチは答える。

スサノオはいつのまか手にしたお酒の入った入れ物を持ちながら、
「で?そのヤガミヒメは一緒に付いて来てくれないのか?」と答える。

ぐい、とお酒を飲んだ時にスセリヒメが「行ける訳じゃないでしょ!(汗)」とたしなめる。

部屋は、広くて物があまり置いてなくてがらん、としているのに、
空気は全然冷たくなく、熱くもなく
丁度良い温度に保たれていて、どうでもいいことであるが不思議に思うオオナムチ。

しかし調度品、家具は機能性に優れている作りをしていて、かつ美しさもあり
形あるものは必ず崩れる、という考えが伝わっていないその頃ではあるが
その概念をぼんやりと知っているオオナムチは
「これはずっと壊れないで欲しい」と心から思った。


「一緒に付いてきてくれるのが妻だ」とスサノオ。
本当に妻なら、その『子供を生んでくれる女たち』を監視しなければいけないし、
『本当に任せられるのか?』を見極めないといけない。
それが許されるから「正妻」なんじゃないのか?

その妻は正妻失格。

よってスセリヒメの勝ち!」

と少しほろ酔いの一歩手前くらいでスサノオが言う。

ふたりの後ろの窓、オオナムチから見て右の壁に大きな窓があるのだが、
白い光が射していた。
時間はどのくらいだろうか、昼前?昼?昼過ぎ?頃だろうかとぼんやり思うオオナムチ。

「しかしヤガミヒメが傷付きます。
それはあまりに―」
とオオナムチが言おうとしたところ、
サッと赤い着物をきたスセリヒメが立ち上がり、
スッとオオナムチの横に座って
「じゃあ、ヤガミヒメさんに会いに行って、事情を説明して、
駄目かどうかを決めてもらいましょう」
と言った。

外からの光が益々眩しく部屋に入って来る。

スセリヒメの目は色素が薄く、猫というかやはり人間じゃないかもという感じだった。


第5章:大国主の話「第7話:スサノオ邸」


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