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ふることふみ

新解釈の古事記 
TOP章ごとの目次第7章:その他第3節:改名

第3節:改名

第1話:改名


時は奈良時代初期。
ある庭園で、父親と娘が話していた。

娘たちを権力者に嫁がせ、それゆえ権力を持っている父親だったが、
娘の問い掛けによって考えを話した。

権力というのは、単に魅力的だから欲しい訳ではない、
見栄えが良いからという訳でもない。
自分の意見が、面倒臭い会議だとか書類だとかを幾度も通すことなく
国を動かすことが出来るきっかけになるからだ、と。

娘はいかにも育ちの良い、
おっとりとした雰囲気の女性で、ぽわ~っとしながら話を聞いていた。

父親はごつごつした顔立ちで、
柔和な感じの娘には全く似ていない。


父は、娘から少し離れて物思いにふけりながら散歩した。



あれは、まだ自分が「史(ふひと)」と名乗っていた頃のこと。

何故か、その頃の記憶が少し壊れている。

内容は覚えているけど、風景とか、天気とか状況とか、、
視覚的な物事がほぼ欠損している。

こんなことを言われた、という内容だけは覚えているのだが―・・・

だが、
思い出すたびに可愛い女の子に「あ、良かった」と
ぶつかってしまったのだが、怪我ない?御免ね、と謝られて
「いや、何もない」と言ったら、そんな風に言われたような
そんなきゅんと来る感覚になる。

実際は自分とそっくりな顔の男性との思い出なのだが。


「(花びらが 舞っていた、ような―・・・)」


ある日、双子か?と思わずガン見してしまうくらい自分にそっくりな男性が現れた。

中臣史  なかとみのふひとという名前を持つ自分に対し、
その人物は
中臣命  なかとみのみことと言った。

近すぎる、血縁関係がないのに
いつの間にか同じ名前の存在が出来ていて、顔までそっくりなんて、
自分の暑苦しさが地上に伝染してしまった、、と「もうすぐこの世が滅びるんですか?」と
聞きたくなるくらい深刻な顔して、その男性は語った。

名前までそっくりなのがなんか恥ずかしすぎる、
ミカヅチ様に何と言われるか、と
大声で言っていたその男性。

「史」という名前を「府日戸」とか何か別のものに変えてくれ、と。
文字一字をやめて三文字くらいの名前にしてくれ、と交渉し
「親からもらった大事な名前は変えられない!」強く拒否する史に
いやいや、、としつこく食い下がっていた中臣命。

しばしの言い合いの後、
「人の比べられない程優れている人、という意味の『不比等(ふひと)』なんてどうだろう?」と
中臣命は提案した。

当然史はお断りした。
現代で言うところの「可樽死酢(かたるしす)」のような、中二病っぽい名前を付けられるようなものだからだ。

カタルシス=浄化


しかしやはり必死の頼みに、ついに史は折れた。
一生のお願いです、という言葉があるが、こういう風に使うのが正しいやり方なんだろうなと思わせる迫力と、
誠意だったから。

暑苦しさに圧倒されながら、
ミカヅチという自分の家の祖神(氏神)の元から来たと語る、その中臣命と名乗る男性を見る史。

ミカヅチは代々、中臣氏が氏子を務め、祀って来た。

目の前の男性は、その「ミカヅチ」に仕えていた使用人で、
事情があってミカヅチが地上に降下せざるを得なくなった際に
激しく慟哭し、
そのあまりの忠義心、主人を思う気持ちに心を打たれ、
ミカヅチが「名前」を授けた― といういきさつを持っている神であった。

高天原の神々は、「名前がある神様」たちと、その神様たちの傍にはべる
「名前を持たない、固有名詞を持たない、使用人的な神様」たち、とで形成されている。

家来壱、家来弐、準家来壱、清掃娘三、......などと呼ばれる、後者の神々。

「(にわかには信じがたいが、これを見過ごす手はない)」
抜け目のない史はそう思った。

何かの感覚で、ミカヅチ...つまり氏神の力になりたいという不思議な気持ちがあるのだ。

名前を大層なものに変えれば、それ相応の力を得るのでは?と感じた。


第7章:その他「第3節:改名 ー 第1話:改名」


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